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5 友という名の

 校舎に入り、靴箱の前まで行くと後ろから、私の名を呼ぶ声が聞こえてくる。


「奈留~! おはよー!」


 後ろを振り向くと小学校からの友達の灘実なたみ由南ゆなちゃんが後ろから私を抱き締めてくる。

 初めは抱き締められることに抵抗があったが今では当たり前になっている

 時間が経つとは怖いものだね。


 仲良くなった経緯は色々理由はあるが、理由の一つにクラスがずっと一緒ということが大きいとは思う。

 これはもう運命感じちゃうよね。 ないか‥‥ない‥か。


 そして由南ちゃんは兄さんのお嫁さんになってほしい子上位に位置している。

 しっかりしているのはもちろん、明るく元気な女の子ってところがとても兄に合うと思う。

 つまりはそう、ただ私はお義姉さんがほしい。

 そんな秘めたる欲望は表に出さず、笑顔で挨拶をする。


由南ゆなちゃん! おはよう」


「奈留は今日も笑顔が可愛い。 ずるい‥‥でも可愛い!」


 そういってまたしても私を抱き締めてくる。

 いい忘れていたが、出会った当初は一方的に敵視されてました。

 なんでも、嫉妬したのだそう。

 ま、前世で勉強は出来た方なのでズルしてるともいえるか。


「由南ちゃんの方が可愛いよ♪」


「そうやって心の底から言ってるってわかるから奈留ってすごいんだよね~」


「ん?」


「何でもないよ。 ほら、早く教室行こ」


「うん。ちょっと待って」


 私は下駄箱の扉を開けると中から紙が落ちてきた。


 あーこれがいわゆるいじめというやつですかね。

 しかし大丈夫、前世で鍛えた私の鋼の心をもってすれば‥‥手紙かなこれ‥‥。


 あーこれがいわゆるラブレターというやつですかね。

 しかし大丈夫、前世で鍛えた私の鋼の心もってすれば‥‥なんだとーーー!!!?



 ◆◇◆◇◆◇



「で、どうしたらいいのかわからないと?」


「いや、断ろうとは思ってるよ」


 即答である。

 しかし待ってほしい。 断じて適当に決めたわけでは無い。

 初めはラブレターというだけで、嬉しいと思った。


 だが相手は男。 正直まだ私は、決めかねている。

 女の子を恋愛対象としては見れなくなった。

 じゃあ男か‥‥答えは否である。

 それに言ってしまえば、兄の幸せ、ひいては私の理想とする家族にする初めの計画。

 それこそが今、一番大事ではないのかと。


 結論──ブラコンなので、お付き合いできません!


「まぁ、知らない人といきなり付き合うとかは中々難しいもんね」


「そそそうだよね! わ、私もそう思ってたんだ」


「なんでそんなに動揺してるのさ。 でもさっき悩んでいるように見えたんだけど?」


「いや男同士の恋愛は成立するのかどうか、今の私を女性と分類してい‥‥いやなんでもないです」


 しかし男の子の気持ちが、わかるからか、とても断りにくい。

 告白するだけで凄いと私は思う。


「でも手紙ってまた古風だよね。 どれどれ‥‥」


「あー! 勝手に読まないでよ! そこからトラウマってものが生まれるんだからね。 私が男なら死んじゃうレベルだよ!?」


 想像するだけで‥‥‥‥死にたい‥‥。

 しかし前世の私にそんな黒歴史もないわけで、あくまでも想像である。


「まぁまぁ、別に言い回ったりするわけじゃないんだから。 これ放課後来てくださいって書いてあるけど行くの?」


「それは行くつもりだけど? やっぱり真剣に向き合わないとね」


 当然だ。 女子が来ないというほど悲しいことはない! いや知らないけど。


「でも奈留、部活行くんだよね? すぐ練習始まるから、放課後時間無いんじゃない?」


 すっかり忘れてた‥‥放課後暇って感覚でいたけど部活あった。

 ちなみに部活はソフトテニス。

 柔らかいボールだから当たっても痛くないかなぁと思い入りました。

 舐めてました。 すいません。

 あとボール、当たると痛かったです。


「作戦変更。 すぐ行って、すぐ帰ってくるよ!」


 部活があるなら話は別だ。

 ファーストフード並みに素早くしようではないか。

 すまんな。 見知らぬ少年よ。 アフターケアは考えておく。

 最近は部活が楽しくてしょうがないので、休みたくはない。


「あんた、部活好きすぎるでしょ! もっと、こう‥ないの? 出会ってみていい印象だったら付き合ってみようとか」


「漫画だったらあるかもしれないね♪」


 そんなもの現実であるわけないよね、‥‥‥‥ね?


 それと私は部活が好きなのではない、先輩後輩などなどの兄の嫁探しが好きなだけだ!

 ソフトテニスは、ちょっと好きなだけなんだから! 勘違いしないでよね!


「奈留の将来が、本当に心配になってくるよ」


「私、勉強は出来るから将来はあまり心配ないと思うよ」


「‥‥そっちじゃないんだよね。 まぁいいや、もうすぐ授業だし」


 由南ちゃんはそういうと自分の席に戻り授業の準備を始めた。

 よくわからずにいた私も準備をすることにした。




 ◆◇◆◇◆◇




 ─────放課後。






「ごめんなさい! すごく嬉しかったんだけど、今は恋愛はできないと思うから」


「そう‥‥ですか。 ありがとうございます」


「でも、友達にはなろうよ」


「え?」


「せっかく知り合ったのにそれっきりなんて悲しいし」


「は、はい!」




 ◆◇◆◇◆◇




「って感じだったと。 へぇー、で、それなんてドラマ?」


「さっきの出来事だよ! 由南ちゃんが少し遅れてもいいから、ちゃんとしろって言ったのから、したつもりなのに‥‥」


「だって──無理ですじゃあね──だけなんてダメに決まってるでしょ、だからよ! というか、なんか男女逆にした方がしっくり来る内容だったね」


「言われてみるとそうだね」


 まぁ元男だったわけですし。


 それと友達になりたかったのは、本心だ。

 前世で友達が少なかったので、今世こそ多くって思ったけど、あまりにも急だったかな?



 ──ていうか、部活中なんだから真剣にしてほしい!

 ボール打てないではないか!


「まぁ奈留がいいならそれでいいけど、あんまり面白くはならなかったね」


「別に面白さは求めてないからね!?」


 由南ちゃんは飽きたと言わんばかりに練習に戻った。

 いや、聞いてきたの由南ちゃんだからね!

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