60 渡したもの
「そういえば、奈留ちゃんに一つ渡したいものがあったんでござるよ」
「え、何々?」
ちょっと遅めの朝食を終えたあと、蕾ちゃんにそんなことを言われたので、私は何だろうと疑問を浮かべながら、蕾ちゃんが渡してくれるのを待っていた。
パソコンをカタカタしているけど、なにしてるんだろ‥‥。
「‥‥これでよしっと。 奈留ちゃん、渡したでござるよー」
「‥‥ん? 何も貰ってないけど?」
もしかして、見えないなにかがあるとかそういうことですか?
これは貰ってないけどお礼を言うべきなんだろうか‥‥。
「あ、携帯の方に送信しておいたでござる」
携帯に送ったのね、そりゃ見えないはずだよ。
「データを渡すってことね‥‥っとアプリがダウンロードするみたいになってるけど、合ってるの?」
「合ってるでござるよ」
「それで、このアプリは一体‥‥」
「この前、相性診断装置で相性がわかるみたいなのあったでござるよね? それをアプリ化したもので、あのデカイ機械を使わなくても診断出来るようにしたでござるよ」
あぁ、あの蕾ちゃんとの相性が凄く微妙だったやつね。
へぇ‥‥それは凄いというかなんというか、あの大きなもので診断してたのがこんなにコンパクトに。
「でも、貰っても私使う機会ないといいますか‥‥蕾ちゃんとはこの前やったし‥‥私友達少ないから‥‥」
「あ‥‥いや、そうじゃなくてね、陸さんと一度相性診断してみたらいいんじゃないかと思って渡したでござるよ」
「お兄様と‥‥でも、この前の大きなやつでの診断で蕾ちゃんとは仲良しだけど、数値は微妙だったし、信憑性があるとはどうしても‥‥」
「何だか二重の意味で心にグサッときたでござる!」
「あ、いや蕾ちゃんの発明品が信用できないとかそういうことでは‥‥わ、わかったよ。 一度お兄様ともやってみるよ」
まぁ、やってみて低い数値になったら、悲しいからその時は信じないようにしよう。
「良かったでござる。 それで操作なんでござるが、カメラで対象を撮れば、診断可能でござるよ」
「それほんとにできるの? 前は大掛かりに診断してたのに」
「じゃあ、一度、小乃羽ちゃんとやってみるといいでござる。 前と同じ数値になるでござろうから!」
ホントかなぁ? えっと‥‥確か前は九十八パーセントだったよね? ‥‥たぶん。
「小乃羽ちゃん、今いい?」
「はい、大丈夫ですよ♪」
えっと、写真を撮ってっと‥‥あ、出た。
「九十八パーセントだね、前と一緒‥‥蕾ちゃん凄いね!」
じゃあ、一度帰ったときにお兄様にやってみようかな?




