57 少し暗い気持ちに‥‥
「えっと‥‥それはなんで諦めたの? 小乃羽ちゃんみたいに思い出せないとか、何処にいるかわからないとかそういうこと?」
「いや、思い出せるでござるし、居場所も知ってるでござるよ。 でも‥‥私は発明が好きでござるから、恋愛はいいでござるよ」
蕾ちゃんはそういうものなのかと一瞬思ったが、でも先程まだ好きなのかもしれないと言ってたということは、諦めてもいないのかもしれない。
それに発明が好きだからという理由で蕾ちゃんが諦めるような子だとは私には思えなかった。
‥‥でも、理由が違うにしても、言わないってことは本人も何かあってのことだろうし、私が深く聞くべきではないよね‥‥。
「なんか、恋ばなで、こんな空気にしちゃって申し訳ないでござる」
「いえいえ、私が提案したわけですから師匠が謝ることないです、私こそすみません」
「私も似たようなものだったし、気にしないで蕾ちゃん。 ‥‥じゃあ、切り替えてもっと別の話をしよっか!」
「そうですね! ‥‥それじゃあ学校のこととか話します? お二人は今年修学旅行でしたっけ?」
小乃羽ちゃんが機転を利かせてくれたお陰で、少し暗い空気から変わったような気がする。
「そういえば、あったね修学旅行」
「今年でござるか‥‥忘れてたでござる」
私たちの中学校は三年生で行くんだよね‥‥確か二年生で行く学校もあるんだよね。
‥‥って、今お泊まり会しなくても、学校行事でお泊まり会みたいなものがあったじゃん!
「場所は確か決められてなかったんでしたっけ?」
「うん、毎年ランダムなんだよね。 でも出来れば季節にあったところがいいよね?」
「確かに、寒いのに海の近くとかは勘弁でござるな。 無理して泳がされたりとかしたら最悪でござる」
でも、行く季節って‥‥どうなんだろ?
そういえば、今年から修学旅行に行く時期がずれたんじゃなかったっけ? ‥‥思い出せない。
「決まってないって何だか妙に緊張するね‥‥」
「毎年同じじゃないということは私とお二方が行く場所は違うんですか‥‥‥‥お土産楽しみにしてます!」
「うん、楽しみにしてて!」
「あはは‥‥了解でござる」
小乃羽ちゃんのことだから、来年にはお返しをくれる気がするし、良いものを買いたいね。
「あとは、修学旅行と言えば班を決めたりするのが醍醐味ですよね!」
「「あ、忘れてた」」
友達が少ない私にとっての地獄と言っていいほどのことが‥‥。
誰か組んでくれる人はいるんだろうか。
蕾ちゃんもたぶんそう思ったのかもしれないが、私たち二人は一気に暗い気持ちになった。




