56 私達の恋愛話
そして、小乃羽ちゃんが考えるような仕草をしている間に、蕾ちゃんは私に小声で話しかけてくる。
「‥‥奈留ちゃん、これはどうすれば‥‥というか、奈留ちゃんの恋愛話は陸さんについてでござるよね？」
「さ、流石に話して小乃羽ちゃんに引かれたりなんてしたらたぶん私立ち直れないと思う‥‥だから、話す流れになったら暈して話すか、全力で恋愛話はないと言い張るよ」
「それがいいでござるね」
「‥‥蕾ちゃんは？」
「私も同じような感じでいくでござる」
正直、蕾ちゃんの恋愛話は少し気になるところではあるんだけどね。
でも、私みたいに話しにくいことかもしれないからね。
そう考えている間に小乃羽ちゃんが何かを思い出したような、そんな表情をした。
「そういえば、本当に小さなころのことなんですけど、一度格好いいなぁと思った子はいました！ たぶんその子が初恋なんでしょうけど‥‥やっぱり昔のことなので思い出せないですね」
「じゃあ、今はどうだったりとかはあるの？」
「今は特に誰が好きとかはないんですよね‥‥あまり盛り上がるような恋愛話もなくて申し訳ないです」
「い、いや、大丈夫だよ、うん。 私も似たようなものだし」
あまり具体的に話されると、たぶん本当に私がどう話せばいいか悩むことになっただろうから。
「奈留お姉ちゃんも同じような感じなんですか？」
「私の場合は初恋から変わってないんだけど‥‥今のところは特に誰かと恋をするとかはないだろうから」
そう、お兄様のことはお兄様が選び、私は主張しないというのが一番いい形だろうから‥‥。
「そうなんですか‥‥‥‥綺麗すぎると逆に恋愛話がないというパターンですか」
「え？ 今、小乃羽ちゃんなんて？」
お兄様のことを考えていたからか、先程の小乃羽ちゃんの声が聞こえなかった。
「い、いえ、独り言なので気にしないでください」
「あ、独り言ね‥‥」
こう私に向けて発言したものじゃないものに反応してしまうと、何だかこう‥‥凄く恥ずかしい気持ちになるね！
「師匠は何かそういう話はないんですか？」
「私にあるように見えるでござるか？」
「えっと‥‥はい、見えます！」
一瞬、小乃羽ちゃんが言葉を詰まらせたことを考えるとあるようには見えなかったのかもしれない‥‥いや、でも前に蕾ちゃんのことを聞いたりしていたときに好きな人はいそうだと私が言っていたので、それで意見を変えた可能性が‥‥。
「まぁ、私も初恋はちゃんとあったでござるよ、小学生の時でござるけど‥‥。 今でもその人のことをもしかしたら好きなのかもしれないですが‥‥私はもう、その初恋は諦めたんだ」
蕾ちゃん口から初めて初恋をいう言葉を聞いたが、まさかそのあとに蕾ちゃんから諦めたなんて聞くとは夢にも思わなかったので、私は凄く驚いた。
