48 例えばの話で
「ねぇ、蕾ちゃん」
「何でござる、奈留ちゃん? お腹が空いたのならキッチンに行けばいいでござるよ」
「いや、別にお腹が空いたわけじゃ‥‥というか、キッチンに行っても何もないよね! って、そうじゃなくてね! お泊まり会というから何か特別なことがあると思っていたけど‥‥全然何時もの泊まりじゃない時と変わらないよね!?」
先程から基本的にゴロゴロしたり、現在はテレビゲームをしたりして遊んでいた。
しかし、これは別にお泊まりの時じゃなくてもやっていることだし‥‥楽しいんだけどね。
「それは奈留ちゃん考えてみてほしいでござるよ」
「え?」
「例えばでござるが、元々友達が出来なくて苦労している人間がいきなり人気者になって友達が沢山出来るようになるなんてあり得るでござるか?」
う~ん、回りにそういう人がいたことはないけど‥‥でも物語ではよくあることだもんね。
「いや‥‥まぁ、ないこともないんじゃ──」
「───ないでござるな!! そんなの実在なんてしないでござる!」
「凄くはっきり‥‥」
ないことはないと思うよ? いきなりその人の良いところが見えたりとかしたら、友達も沢山できるかもしれないし。
まぁ、私はそういうところがないから友達出来ないんだけどね!!
「ま、そんな感じで前から出来なかったことが出来るわけなく、出来てたらもうやってるのでござるよ」
「別に例える必要はなかったんじゃ‥‥。 でもまぁ、理由としてはなんとなくわかったかな。 つまりは思い付かなかったんだね」
「あはは‥‥」
泊まることが楽しみでその辺のことを考えてなかったのかな?
「そういえば、小乃羽ちゃんは今日は来ないの?」
「来ると思うでござるよ。 まぁ、奈留ちゃんとお泊まりってことは全く知らせてないでござるが‥‥。 基本的に休みの日はずっといるでござる」
「そうなんだ」
そういう話をしていると同時に、チャイムの音が鳴り響いた。
「師匠ー! 来ましたー!」
玄関の方からそんな声が聞こえてくる。
噂をすればってやつだね。
「あ、小乃羽ちゃんでござるな」
そしてすぐに私たちのいる、リビングの方に入ってきた。
「すみません、師匠! 友達と遊んでたら遅くなってしまって‥‥って! 奈留お姉ちゃんもいるじゃないですか! こんにちは、お姉ちゃん♪」
「小乃羽ちゃん、こんにちは~」
いや~いつ見ても元気いっぱいな小乃羽ちゃんだね。
「別に友達と遊んでいたなら、無理して来なくてもよかったんでござるよ?」
「いえいえ、師匠の家の方が優先ですよ」
そんな蕾ちゃんの家ばかり優先していたら、何だか友達でなくなってしまうんじゃないかと私は不安になっちゃうけど‥‥小乃羽ちゃんは我が道を進んでいて凄いね。
「それでも友達と仲良しなんだね。 小乃羽ちゃんは友達は多い方なの?」
「う~ん、どうなんでしょう。 元々友達はほぼいないに等しかったんですが、テストの順位で一位をとってから色んな人に聞かれるようになって、そこから色々と話していく内に、友達が沢山できまして‥‥だから多い方だとは思いますよ」
「「例え、いた────!!」」
蕾ちゃんも私も流石にこんなに身近にいるとは思っていなかったので、しばらくの間私たちは唖然としていた。




