41 空回り
家に帰った私はどうすればお兄様に振り向いてもらえるように頑張るかを考えていた。
蕾ちゃんが言っていた通り、急に変えることは出来ない。
こういうことに近道を求めてしまえば楽なのだろうが、私にはそんな器用なことは出来ないだろう。
間違えないように一歩ずつ。 慎重にしていく方があってる。
きっと蕾ちゃんもその方が私に合ってるから言ったんだろう。
でも、少し変えると言ってもどんなことが少しで、またどんなことがお兄様に好かれるのかが全くわからない‥‥。
基本的にお兄様はなんでも喜んでくれるし、今の性格になってから考えても、何がこう駄目だとか言われたことがないからだ。
‥‥いっそのこと一度甘えてみたり、わがままを言ってみる?
いやいや、考えただけでも恐ろしい! そんなお兄様に気を使わせてしまいそうなこと!
お兄様が許したとしても私が出来ない!
はぁ、変わるなんていっておいて何も思い付かないというのは情けないというか‥‥。
少しずつ変わるじゃなくて考える方にまずは、つまずくとは‥‥。
「奈留、どうした?」
「ふぁ!? お、お兄様!? お、お帰りなさい!」
気づいたら目の前にお兄様がいて、私は後ろに少し飛んだような気がする‥‥。
「ただいま。 ボーッとしてたからどうしたかと思ったが、悩んでただけか? 何かあったか?」
「い、いえ。 お兄様に相談するほどのことでもないので大丈夫です」
というか、お兄様自身に相談なんて死んでも無理です。
「そうか‥‥まぁ、無理してないならいいがな」
◇◆◇◆◇◆
「はぁ、森田先輩風邪ですか‥‥?」
「そうなんだよ。 まぁ、そこまでじゃないらしいんだが大事をとって休んでたんだ」
「そうなんですか‥‥」
じゃあ、やっぱりいなかったのって学校を休んでたからなんだね‥‥って! 何だか普通に話してるけど、これじゃあ以前と変わってない! 今は思い付かないからかもだけど、やっぱり自分を変えるというのはそう簡単に出来ることではなさそうだね‥‥。
「奈留、本当に大丈夫か? なんか今日おかしいが‥‥」
「ほ、本当に大丈夫ですよ!」
本日二度目だ、気を付けないと‥‥。
変えることばかりに気が向きすぎて、今の関係が壊れてしまっては元も子もない。
「まぁ、今日はゆっくりしておけ。 夕御飯は俺が作るから」
「え! わ、私作りますよ!?」
学校で疲れているだろうお兄様にさせるわけには‥‥!
「今日は作りたい気分なんだ。 駄目か?」
「‥‥‥‥だ、駄目じゃないです」
結局、なにも考え付かずにお兄様に気を使わせてしまうことになってしまった。
行動にうつすならもう少し計画を練らないと不器用な私には無理だなと改めて思った。




