39 お兄様と転校生
その後、授業が終わり、昼休みになった。
私達はお兄様のいる教室の中に入ることに成功した。
『蕾ちゃん、入れたのはいいけど、これ人に当たるとダメだよね?』
『まぁ、透明と言っても、別に存在をなくしてるわけじゃないでござるからね。 普通に当たってバレそうでござるね』
なら、慎重に進まないと!
『結構お兄様に近付くのも大変だね‥‥』
『転校生の周りに人が多いでござるからなぁ‥‥』
転校してきて日数経ってるはずだよね‥‥こんなに美人の上に友達も多いということか‥‥。
何ですかこの完璧超人‥‥!
『でも、ここから見てもお兄様が転校生さんと話している気配はないね』
『本当でござるね。 というか逆に人が多くて鬱陶しそう‥‥』
興味ないって言ってたのは本当だったんだね‥‥何だかホッとしちゃったよ。
『何だか自分の目で見たら納得しちゃったし、これで終わってもいいかもね』
『少し早いでござるけど‥‥まぁ、一目瞭然でござるもんね‥‥じゃあ、誰かにぶつからないうちに───』
蕾ちゃんが帰ろうと言うタイミングと同時に転校生のとある言葉が耳に入ってきた。
「ねぇ、夕闇くん。 勉強教えてくれないかな?」
‥‥ん? どうして急にそうなった?
それに、さっきまで大勢周りに人がいたはずなのに、何故か今は散らばっている。
「ん? なんでだ」
お兄様も凄く疑問そう‥‥そりゃ急に言われたらそうなるよね。
「前通ってた高校と勉強の進みにズレがあって、先生に教えてもらおうとしたら、夕闇くんに頼んでって言われて‥‥」
「‥‥またか。 やる気なさすぎるだろあの教師‥‥。 まぁ、わかった、別に暇だしいいぞ」
『完全に仲良くなるパターンのやつでござるな』
『そういうのは友達同士でやればいいじゃんと思うのは私だけ? というか、先生は何でお兄様を頼るんだろう‥‥』
『まぁ、陸さん順位トップだし、何でもできるし、実際先生よりも教え方うまいでござろうし、先生が任せちゃうのもわかるでござる‥‥』
そりゃ、教えてくれるなら成績が良い方が良いだろうけど‥‥。
私が蕾ちゃんに教えてもらってるように。
『それはそうなんだけどさ‥‥』
お兄様が何でも出来るのはわかってるけど、こんな負担になるようなこと‥‥。
いや、お兄様が森田先輩に勉強を教えているときは今のように考えたりすることはほとんどなかった。
嫉妬‥‥してるのかもしれない。
教える相手があの転校生さんだから‥‥。
そう思うと何だか自分の心の狭さのようなものを感じて‥‥何だか自分がとても嫌になった。




