34 興味がない?
森田先輩が転校生の話をしてから、一週間が経ち、その話をしたことも頭から段々と薄れて来た頃。
学校が終わり家に帰ると、お兄様はまだ家に帰っていないので、お兄様より先に料理を作るために下準備を始める。
今日はいつもより凝ったものを作ろうかな。
それから私は料理を作っていたのだが、ふと時計を見ると、普段学校から帰ってくる時間に、お兄様が帰ってきていないことに気づく。
「‥‥どうしたんでしょう?」
まぁ、お兄様がいつも寄り道しないで帰ってきてくれるから遅く感じるだけで、今日はもしかすると森田先輩と何処か寄り道しているのかもしれないですね。
大人っぽいですが、お兄様は高校生ですからね。
うん、時間をかける料理を作ることにして正解でしたね。
そして、そこからまた少し時間が経ち、玄関の方から音がした。
「奈留、ただいま」
「お帰りなさい、お兄様」
特に何事もなく帰ってきてくれてよかったです。
そして、隣には‥‥。
「ちわー! 奈留ちゃん!」
「今日もですか、森田先輩」
毎度のことながら、よく来ますね。
「うん! もう俺にとっては第二のダイニングみたいなものだからね!」
それを言うなら第二の家とかそういうことじゃ‥‥ダイニング限定って、もはや食事しにしてるみたいな感じになってますけど‥‥。
「奈留、こいつはいないことにしてくれていいから。 勝手に付いてきてるだけだし」
「はい、わかりましたお兄様」
「ふ、二人とも冷たい‥‥」
◇◆◇◆◇◆
料理が完成して、ダイニングのテーブルに並べていくと、一目散に森田先輩が駆け寄ってくる。 それに対して、ゆっくりと座るお兄様。
そして、三人で食卓を囲んでいると広葉が話を始めた。
「それにしても今日転校してきた子、凄かったなぁ‥‥。 そうは思わないか陸!」
「あぁうんうん、そうだな」
お兄様は適当に返しているが、話を聞いていると何となくこの前のことだとわかる。
「あの、それってこの前話していた転校生ですか?」
「そうそう、今日転校してきたんだよ。 磨北祈実さんって言うんだけど、凄く美人でね! いや~テンション上がったなぁ」
へぇ、凄く美人さんだったんだ‥‥。
「初日から色んな人に話しかけられていたな。 正直、席が隣だからうるさくて仕方がないが」
お兄様の隣の席! なんと羨ましいその転校生!
「美人転校生の隣になれて、そんなこと言う男はクラスで陸くらいなものだよな‥‥」
「なれてっていうか、一番後ろの席だったから隣のスペースが空いていて、向こうからきただけだぞ」
「本当に興味なさそうだね陸。 やっぱり欲がないって大事なんだなぁ‥‥」




