32 珍しいこと
「そういえば、女の子の話題で思い出したけど、来週に転校生が来るらしいんだ」
森田先輩が突然そんなことを言い出した。
「高校生でですか、珍しいですね」
小学生の時なんかは親の都合とかで、転校が多いこともあるだろうけど‥‥。
中学高校になるにつれて、よっぽどのことがない限りは中々転校してくる人は少ないような気がする。
「というか、どっから仕入れたその情報。 まだ先生も言ってなかっただろ」
「そこはまぁ、ツテというやつで‥‥」
森田先輩、色んな人とすぐに仲良くなれますからね。
もしかしたら、先生の中に森田先輩と仲の良い先生がいるのかもしれませんね。
「でも、さっきの言い方だと、男じゃないんだな」
「そうそう、って陸、あまり興味なさそうだね~」
「まぁな。 男なら転校初日に仲良くなるかもしれないから、どういうやつかは気になるが、女の子の場合は関わらんだろ、俺も広葉も」
「さらっと俺いれるのやめてもらっていいですか? それと陸は関わらないだけで、頑張っても関われない俺と違うんだから一緒にしてんじゃねー!」
いや、別にそういう意味でお兄様は言ってないと思いますよ、森田先輩。
でも、お兄様がその転校生の女の子に興味をしめしていないのは、私にとってはありがたいことで、助かる。
「まぁ、余程のことがない限りは関わらんだろ」
「いやいや、そういって仲良くなるのが陸なんだから。 お前がびっくりするぐらいモテているのを俺は知ってるぞ」
「それは広葉の勘違いだろ。 というか、奈留の前でそういうこというなよ」
‥‥勘違いと言っても、この前の遊園地の時とか、蕾ちゃんや小乃羽ちゃんと話しているときとか凄く自然だったし、きっと女の子とは普通に話しているのだろう。
こういう時に、お兄様と学校が一緒ではないというのが、本当に残念でならないよ‥‥。
‥‥はぁ、普通ならお兄様がおモテになるのは妹としては嬉しいことではあるんだろうけど、私にとっては複雑だ。
「でも、今の中途半端な時期になんで転校なんでしょうね?」
「わからないけど、親の仕事の関係じゃない? よくある話だし」
「確かにそうですね」
「それより、奈留ちゃん。 晩御飯は何かな?」
あ、今日もなんですね。
もうそろそろ作ろうと思ってたからちょうど良いかな。
「今日も食って帰るのか、広葉」
「そりゃそうだよ! 美味しい奈留ちゃんの手料理が食べたいんですよ」
料理ならお兄様の方が美味しく作れると思うので、美味しい手料理が食べたいならお兄様に言ったらいいと思うんですが‥‥。
まぁ、お兄様には及ばないですが、作りますか。




