44 お菓子
この前の宣言通り、土曜の休日に大量のお菓子が家に届き、ポカーンとしている兄さんと広葉。
小乃羽ちゃんも誘ったので、今日は私を含めて四人体制でこのお菓子を食べる。
まぁ四人ならいけるでしょ。
小乃羽ちゃんは甘いものが好きなのか、さっきからウキウキしてるし。
「これ全部食べていいんですか!?」
「えぇ、たくさん作りすぎたからね」
わぉ、全部と言いましたか? この後輩‥‥できるな。
「まぁ全部は食べられなくてもいいんだよ?」
「大丈夫ですよ御姉様。 スイーツは別腹です!」
いつも思うが、何その女性特有の消化器官は‥‥。
私これでも、十三年は女性だが、まだ一度も出現したことないんだが。
「そういえば、広葉。 お前甘いもの得意じゃなかったはず‥‥」
「あ、そうなんですか? じゃあ森田さんは見学でいいですよ」
なんか小乃羽ちゃんいたらなんとかなりそうだし。
「女の子が、作ったお菓子は食べたい! それに奈留ちゃん、いっぱい食べる男はどう思う?」
いっぱい食べる男性ですか‥‥。
まぁ喜んで食べてくれるなら好き‥かな?
残されるよりはね。
「好きですね」
「じゃあ、食べる。 俺はこの戦に命を懸ける。 負けられない戦いがそこにあるだ」
お前は何と戦ってるんだ。
もっと別のことで命かけろよ。
やっぱりここは止めた方がいいよな。
私が止めようとしたら、兄さんが口を手で塞いで止めてきた。
「まぁ広葉が食べるっていってるんだ。 食べさせてやろう」
そうか、時には黙って見ているのも大事なんですね。
親友の思いを尊重する‥‥いい友情話です。
「兄さん‥‥」
「奈留、広葉にとことん甘いやつを持ってきてくれ!」
ただの嫌がらせだったみたいです。
「由南先輩、これ美味しいです!」
小乃羽ちゃんを見るともう結構食べているようだ。
「ありがとう。 そう言ってもらえて嬉しいわ。 まだまだあるからどんどん食べてね」
「はい、わかりました」
そう言いながらも、スイーツは食べ続けている小乃羽ちゃん。
いやー女性ってすごい‥‥私も女性だけど。
「先輩方、すいません。何だか無理に食べさせてしまったようで」
「大丈夫だよ灘実さん。 どれも美味しいから、どれだけ食べても飽きないよ。 な、広葉?」
「ヴォグクォゴグモグ、プァッ! 酷いよ陸! 口に詰め込んでくるなんて!」
「命を懸けるんだろ? さぁ、もっと食え!」
「陸! 待って少し休憩させ、ヴォグォ!!?」
兄さん、それ以上はさすがに広葉死んじゃうから!
さっきから変な声出まくってるから!
「皆、美味しそうに食べてくれて良かった」
由南ちゃん、若干一名は無視の方向ですかね?
その後、はしゃぎながらも私達は食べ続けた。
その甲斐あって、あれだけあったお菓子が日が暮れる頃には、全てなくなっていた。
無事に食べきったことを喜び、皆は家に帰っていった。
若干一名フラフラになりながらだったが‥‥。
「いつもいるアイツの姿が見えない。 そうか、広葉という犠牲はあったが、俺たちは無事に成し遂げたな」
「いや森田さん死んでませんから。 いつもより早めに帰っただけですから」
そもそも追い込んだの兄さんですからね!
◇◆◇◆◇◆
日曜日。
この前、由南ちゃんの家にあった本がもしあったら読んでみようかなと思い、図書館に行くことにした。
二度あることは三度あるというように、藍先輩に会うかもと一瞬思ったが、そういえばあの人、今頃沖縄だったな。
そんなことを考えているうちに、図書館に着いていた。
「よし今日は、沢山の本を読む日にしようかなぁ」
早速、目的の本と面白そうな本を探そうと、歩き出すと、遠くに見知った人の姿が見えた。
「あれって‥‥磨北くん?」