43 友人の部屋
部活が終わったあと、言われた通り由南ちゃんの家に向かう。
そういえばまだ何をするとか聞いてなかったな。
「由南ちゃん、そういえば私、家におよばれされる理由を聞いてないんだけど?」
「奈留と遊びたかったから。 それじゃあダメ?」
「そ、そうなんだ」
なんだかそう、はっきり言われちゃうとこっちも照れちゃうな‥‥。
「というのは嘘よ」
「嘘なの!?」
もうちょっといい気分でいさせてほしかったよ!
‥‥いつもながらに切り返しが速いよ由南ちゃん。
あと、一番の目的が遊びじゃないだけなんだよね?
二番目ぐらいには入ってるんだよね? ね?
「まぁ今日は遊びに来てほしいというより、手伝ってほしかったのよ」
「手伝い?」
「きたらわかるから」
私は疑問に思いつつも由南ちゃんについていった。
◇◆◇◆◇◆
「‥‥なにこのお菓子の山は」
テーブルの上に並べられたスイーツの数々。
「最近お菓子作りにハマってて‥‥作りすぎちゃった♪」
由南ちゃんは、テヘといわんばかりの仕草を私に向けてしてきた。
可愛い‥‥ってそうじゃなくて!
まぁ、確かにお菓子作りって女の子っぽいし、作る子も多いと思う。
けどさ!
「由南ちゃん、甘いもの得意じゃないと思ってたんだけど‥‥」
「そうね。 苦手だね」
そうだよね! 甘いもの苦手っていってたもんね!
「食べれないのになんで作っちゃったの!?」
「何だか作るのは楽しいんだけど、終わってしまうとなんだか次が作りたくなるの。 一応食べてはいるんだけど、どんどん増えてきて。 だから言ってるの、手伝ってほしいって」
あー手伝ってとはそういう‥‥。
まさか食べることを手伝わせるとは。
‥‥この量、食べられるのか。
しかーし、これでも甘いものは好きだし、前世は、結構たくさん食べてたから、このぐらい完食してしまうかもしれないなぁ!
◇◆◇◆◇◆
~十分後~
「ごめん! もう無理!!」
全くテーブルの上のお菓子は減っていないが、私の胃袋は限界が来た。
今思ったら、前世食べてたからとか、関係ないね!
「ごめんなさい無理なお願いして。 先に私の部屋で休んでてくれる? 片付けておくから」
「‥‥うん」
なんだか何かに負けたような気分になりながら、とぼとぼと二階の由南ちゃんの部屋に、入っていった。
久々に入る由南ちゃんの部屋は、最後に入ったときとそこまで変わらなかった。
さすがにはじめは驚いたんだけど、なれたらこんなものだよね。
本当にすごいなぁ、この”ぬいぐるみ”の量は。
由南ちゃんの、部屋はいたるところにぬいぐるみがある。
始めてきたときはそのギャップに驚いたが、今思うとそんな由南ちゃんも可愛く見えるね。
きちんと整頓もされてるから、部屋も綺麗だし。
そういえば、女の子の部屋に入って緊張しなくなったのはいつだったんだっけなぁ。
そう考えようとしたと同時に扉が開いた。
「おまたせ」
「早かったね。 久々に由南ちゃんの部屋に入ったから、いたずらしようと思ってたのに」
まぁ冗談だけど。
「奈留はそんなことしないでしょ? そんなことより、はいお茶」
「あ、ありがと。 それにしても、いつきてもすごいね、ぬいぐるみ」
「子供っぽいとは思ってるんだけど。 でも可愛いし。 自分の部屋だから特に誰も迷惑しないでしょ?」
なんだか由南ちゃんらしいな。
「あはは、私もかわいいと思うよ。 由南ちゃんの部屋好きだし」
何もないよりは、可愛いものがあった方が、なんだか女の子の部屋って感じがするしね。
「‥‥久々に奈留が友達で良かったと思ったわ」
「久々は、余計でしょ!」
横を向いてしまった由南ちゃんは何だか嬉しそうだった。
◇◆◇◆◇◆
由南ちゃんの部屋で何となくボーっとしていると、本棚が目にはいる。
その本棚の中の一冊が目に入った。
「由南ちゃんこの本って‥‥」
「え? あぁ、昔に一度読んだ本だよ。 内容はあまり覚えてないけどね。 小さい頃に破いちゃったみたいで肝心の後半がもう読めないから。 でもなんか本って捨てられなくて」
題名が【死と夢の楽園】という本‥‥。
その本は図書館で、何だか知ってるなぁと思っていたけど、由南ちゃんの家にあったから知ってたのかな。
「これってどんな話なの?」
「ありきたりな話だったと思うけど。 え~と、確か、寝ている間に夢と死後の世界が繋がるとかなんとかで、主人公の女の人が寝ている間に‥‥何だったっけな?」
「やっぱり、読んだことないなぁ」
でも何なんだろう、この違和感‥‥。
「まぁ読みたいなら図書館で借りればいいんじゃない?」
「あはは、そうだね。 読みたくなったらそうするよ」
また図書館に行くことがあったら借りてみようかな。
◇◆◇◆◇◆
「今日はありがとう。 色々と思い知ったわ。 お菓子作りは程々にしようと‥‥」
止めるつもりはないけど次からは、食べる人がいるときに作ってほしいものだ。
「あ、今思ったけど、兄さん達に食べてもらえば、すぐに片付くんじゃない?」
「それもそうね。 じゃあ休日に持っていく」
「うん、じゃあまたね」
そういえば兄さんは、大丈夫なはずだけど、広葉って甘いもの大丈夫だったっけ?
ま、いっか!




