426 思い出の‥‥
信くんが遅くなる発言をしてから少し経って、私は信くんと手を繋ぎ、夕暮れの空のもと歩いていた。
何故かあれから口数も少なくなり、私は信くんに付いていく形になっていて、少し気まずい‥‥。
何だか、付き合う前の気分になったようだよ‥‥。
どうなるかわからずにドキドキするし、手を繋いでいるのにもドキドキするし‥‥。
「そういえば、奈留さん」
「ん? どうしたの信くん」
自分からは話しかけづらかったから、信くんから話しかけてくれてホッとした。
でもなんだろう‥‥。
「中学二年の時にさ、皆でお祭りに行ったことがあったよね」
「あったね。 あの時楽しかったよね。 色んなことがあって‥‥。 中学三年の時にも皆で行って、それはまた変に楽しかったけど、やっぱりあの時のお祭りは特別だよね」
皆で遊んだ後に、はぐれちゃって信くんと二人きりになって、そのあとお互いの気持ちを確認して‥‥まぁ、勘違いはあったけど、とても良い思い出で、かなり前のことなのにまだついこの間のように感じる。
「あの時の花火も凄く綺麗だったよね」
「そうだね‥‥今でもすぐに思い出せるよ」
あの時の夜の空に輝く花火は本当に‥‥ん? 夜?
あ! もしかして今日花火大会があったりして! ‥‥って流石に地元であるなら、私知ってるよね。
この時期に花火をあげてる場所はあったとしても流石に大分離れた場所にあるだろうしね。
「今からあの場所に行ってみよっか」
「え、今から!?」
流石に花火がある訳じゃないんだし、あそこに行ってもなにもないんじゃ‥‥。
あ、もしかして、手持ち花火をするのかな!
確かにそれならあり得るような気がする。
それに、人が来ることもないから、迷惑にならないだろうし‥‥。
‥‥でも、信くんが何か持ってることはないんだよね。
水をいれるバケツとか手持ち花火とか‥‥。
ありそうかと思ったけど、やっぱり違うのかな。
う~ん、信くんの考えがさっぱりわからない。
こういう時、祈実さんならすんなりわかったりするのかな?
‥‥あ、またネガティブになりそうだった、ダメダメこういうこと考えたら。 今は信くんと二人きりなんだから!
「あの時のままなのか少し気になってね」
「そういうこと‥‥うん、私もちょっと見てみたいかな」
別にあの場所で何かある訳じゃないのかもね。
でも、そうだね、あれから一度も行っていないし、思い出巡りみたいな感じで面白いかもしれない。
「じゃあ行こっか」
「うん!」
そうして私達は思い出の場所に向かって歩き始めた。




