420 届かないようです
ご飯のあとは、兄さんに服を選んでもらい、私は準備万端の状態になった。
そろそろ自分で、自分の似合う服をわかるようにならないといけないけど、どうしても兄さんを頼ってしまうのは悪い癖だね。
まぁ、兄さんを頼らないと凄く寂しそうな目をするからっていうのもあるんだけど。
そんなこんなで、準備は整い私は兄さんより先に家を出ることになった。
「じゃあ、いってくるね」
「あぁ、気をつけてな」
兄さんと笑顔で別れ、私は信くんとの待ち合わせ場所に向かった。
◇◆◇◆◇◆
待ち合わせ場所に向かうと、信くんがもう既に待っていて、私はあわてて時計を見た。
‥‥ふぅ、遅れてはないよね。
そうしてる間に、信くんが私に気づいたようで、手を振ってくれている。
私は小走りで、信くんのところまでいった。
「信くんお待たせ。 私も早くきたつもりだったんだけど、早いね」
「奈留さんの方が来るのが早いときが多いからね。 出来れば今日くらいは早めに来たかったんだ」
そんなに気を使わなくてもと思ったが、私が信くんの立場なら絶対にそうするので、特になにも言わない。
「でも、少し早めの集合になっちゃったね」
「そうだね、じゃあちょっと本屋に行かない? 最近あまり新しい本を買ったりできてないんだよね」
まぁ、早めに来ちゃって時間が沢山あるし、いいかもしれない。
「うん、いいよ。 いこっか!」
◇◆◇◆◇◆
今日はいつも行っている本屋ではなくて、少し家から離れた大きい本屋に来ていた。
ここなら普通の本屋には置いていないようなものもあるし、新しい発見がありそうだね。
まぁ、品揃えはいいんだけど、私はあまり利用はしないんだけど‥‥。
「奈留さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫。 と、とれるから‥‥」
利用しない理由は棚の上の方の本が全く届かないから!
脚立をとれば全然とれるかもしれないが、何だかそれだと負けた気分になるからしたくない! 何に負けるか知らないけど!
くっ、前世だったら絶対にとれたのに‥‥!
はぁ、あれは諦めよう‥‥前にも何処かで読んだことあるしね。
「信くんは見たい本見つかった?」
「うん、前世で夕闇くん‥‥奈留さんが読んでいたものがあってね。 ちょっと買ってみようかなぁって」
「信くん、よく覚えてるね。 私自分が読んだ本も、わからずにもう一度買って読んじゃうときもあるのに」
まぁ自分は忘れすぎなような気がするが‥‥。
「奈留さんが進めてくれた本はちゃんと読みたいからね」
「信くん‥‥」
なんだろうな‥‥物凄く嬉しい‥‥。
そのあと少し、心が暖かくなったような気がした。




