415 抜け出したり作ったり
「卒業アルバムっすか。 懐かしいっすね」
後ろから突然現れた蕾ちゃんに、内心ドキッとしつつも、ギリギリの所で声を出さないでいることができた。
「蕾ちゃん。 蕾ちゃんも由南ちゃんに誘われたの?」
私は一切聞いていなかったので、ちょっとは言っておいてほしいものだよ。
まぁ、仲間外れはいけないからね、うん。
「さっき、暇ならスイーツが余ってるから食べに来てって由南ちゃんに言われたんっすよ」
あれ? でも蓮佳さんの作ったスイーツの時は一瞬でお腹がいっぱいになっていなかったっけ?
いや、あの時はきっとコンディションが良くなかったんだよ、きっと。
「それで、来てみたらスイーツじゃなくて卒業アルバムを見ていたと」
「そうなんっすけど、しかし卒業アルバムも懐かしくて楽しそうっすね」
「蕾も奥にしまってるの?」
さっきの言い方だと、あまり卒業アルバムを見ていないってことになるからね。
「もう何処にいったかすらわからないっすよ。 たぶんですが、実家にあるんじゃないっすかね」
「そういえば、今は独り暮らしで小学生の時に住んでた場所とは違う場所だったわね」
まぁ、必要のないものはかさばるし、持っていかないだろうからね。
「ま、そういうことっす。 ‥‥あ、この写真、私写ってるっすよ!」
「あ、ほんとだ。 ‥‥って、後ろ姿だね」
よくあるよね。 写っていても、半分顔が写ってなかったり。
「たぶん私が写ってたのってこれくらいだったと思うっすよ。 暇があれば抜け出してたっすから」
中学生の時もだったけど、小学生の時から抜け出してたんだね。
それでなんで勉強できるのか、本当に謎です。
「変わらないわね、そういうところも姿も」
「姿は関係ないっすよね!?」
私に言ったのと同じこと言ってるよ由南ちゃん。
「抜け出して何作っていたの、この頃は」
あ、確かに気になるね。 小学生の時だから現実的なものだろうけど。
「あ、タイム───‥‥と、時計を作ってたんっすよ」
「時計? 意外に普通なのね」
蕾ちゃんは誤魔化したが、私は花さんのことで作っていたであろうものが何となくわかったが、小学生の時には既に作りはじめてたんだっけ?
う~ん、ちゃんとはわからないな。
私がそんなことを考えている間も、二人の話は進んでいたようで。
「時計って結構作るの大変なんっすよ? 本当に甘く見ちゃいけないっすよ!」
「別に甘く見てはないわよ。 蕾は甘く見てるけど」
「なんでっすか!?」
結局いつもの言い争いのようなものになっちゃうんだね。




