414 小学生の頃
前半は由南ちゃん視点です。
昔、いやそれほど昔ではないかもしれないが、小学生の頃。
私は奈留が嫌いだった。
なぜ嫌いだったかと言われたら、困ってしまうくらい自分でもよくわからなかったのだが、今思えば自分が持っていないものを持っていたからという理由。
つまりは嫉妬していたのだ。
しかし、そんな考えが変わっていったのは、ある意味当然と言えるかもしれない。
自分が勝手に奈留の性格をイメージして、勝手に嫌っていただけなのだから。
本来の奈留の性格を知っていれば、何て馬鹿らしいことだと思う。
私も気づいたときはそう思った。
そして、それと同時に仲良くなりたいなんて柄にもないことを思っていた。
今まで友達は多かったが、別に特定の人と仲良くなりたいなんて思ったこともなかったのに。
でも、それからが大変だった。
回りの友人たちは、奈留を嫌ってると思っているので、近づけないようにされていたり、話したら話したで、めちゃくちゃ人見知りだし。
しかし、そんな状態でも徐々にだが、話せるようになるのは嬉しかったし、何よりも以前は間近で見ることもなかったから、そこまで思わなかったが、奈留はとても可愛かった。
あまり人には言わないが、私は可愛いものは好きだから。
そして、仲良くなるにつれて、自分が奈留のことを嫌いだったことに負い目を感じるようになった。
奈留はあまり気にしないだろうけどね。
それで一時期、奈留に凄く気を使った時もあったのだが‥‥‥‥そんな時に奈留が言ってくれたことがある。
『由南ちゃん、親友は対等なんだよ』
奈留は覚えていないだろうし、たぶんだが気を使っていたことすら気付いてはいないだろうが、それでも、対等な親友と思ってくれたことが嬉しかった。
もしかすると、奈留のために何かしたいと思うのは、その名残なのかもしれないが、あの時とは違い、負い目なんかは感じていない。
だから、奈留が困った時があれば、ちゃんと親友として助けてあげられることをしよう。
‥‥‥‥ま、私の出来る範囲でね?
◇◆◇◆◇◆
「ほらほら由南ちゃん、この時懐かしいよね! 由南ちゃんとの二人三脚! ‥‥由南ちゃん?」
由南ちゃん、心ここにあらずといった感じだ。
「あ、ごめん。 ボーッとしてた。 何? ‥‥運動会の時のやつね。 組む人がいないのに二人三脚して、出るつもりもなかった私も参加させられたやつか」
由南ちゃんが面倒くさそうに私と走っている所がばっちり写真に撮られ、卒業アルバムに載せられている。
あれ、でも私なんか変に緊張してない? 気のせいかな。
「本当にあの時は感謝してます! まさか当日になって休んだ人がいて奇数になってしまうとは‥‥」
「ま、いい思い出よね」
あれ? 由南ちゃんがそんなこというなんて予想外‥‥。
てっきり面倒だったって言うかと‥‥。
その後も少し由南ちゃんはその写真を眺めていた。




