410 意外に鋭い!
「お待たせしました、試作品のパスタです」
「パスタか、俺好きなんだよなぁ。 奈留ちゃんのパスタはそれ以上に格別だけどね」
嫌いではないだろうとは思っていたが、好きなら丁度いいね。
「あはは‥‥家に来たときも結構召し上がりますもんね」
「俺の食べる分がなくなるからマジでやめてほしい」
もう慣れちゃったから、特に何も言わないけど、当初は兄さん凄く嫌がってたよね。
「え~うまいものは平等に分け与えられるべきだろ~」
「そんなわけあるか。 奈留の飯は俺のものだ」
「はいはい、お二人とも喧嘩せずに食べてくださいよ。 冷めちゃいますよ」
「あぁ、ごめんごめん。 じゃあいただきます」
ふぅ、ようやく食べてくれた‥‥。
あとは感想を聞くだけだけど‥‥。 今、蕾ちゃん、裏で聞いてるのかな?
「‥‥う~ん」
反応があまりよく‥‥ない?
これはあまり蕾ちゃんにはよくない感想になるかもしれない。
そうなった場合、私は蕾ちゃんを立ち直らせることが出来るだろうか‥‥いや、ここまで準備したのも私なんだから、絶対にしなければ。
「どうしました?」
「いや‥‥美味しいんだけど‥‥」
けど?
「何だか料理になれてない感じがするね。 新人さんが作ったとか?」
うぐっ、バレてる‥‥。
まさか、広葉にそんなこと言われるなんて思ってなかったので、良い返しが思い付かない。
「そ、そうなんですよ」
「そうなんだ‥‥うん、でも美味しいよ。 味付けも好みだし。 何だか奈留ちゃんが作ってくれそうな家庭感もあるし」
「あ、あはは‥‥」
そ、そこも気づきかけてらっしゃるんですか‥‥。
広葉って鋭いね‥‥。
「うん、これなら毎日食べたいぐらいだよ」
ガタッ!!
何か裏で大きな音が聞こえてきたけど、絶対に蕾ちゃんだよね? 大丈夫かな?
「でも、お店で出すなら見た目とかそういうのも華やかにした方が良いんじゃないかな。 今のシンプルなのもいいけど」
「そうですね、そう伝えておきます。 ありがとうございます」
まぁ、お店で出す予定はないんですけどね。
少し罪悪感もあるが、ひとまず聞きたい言葉も聞けたから、大成功かな?
「お役に立てたならよかったよ。 じゃあ、陸。 帰ってゲームするぞー!」
「食べてすぐじゃねーかよ。 まぁ、いいか。 奈留、俺は先に帰るよ」
「はい、ありがとうございました」
二人を見送ろうと出入口まで向かうと、そこで広葉が私に小声で話しかけてきた。
「蕾ちゃんに美味しいものをありがとうって伝えておいてね、奈留ちゃん」
「え‥‥!?」
聞き返そうとしたときには広葉はもう兄さんとともに店を出ていた。
まさか、兄さんがばらしたとも考えたが、兄さんがそんなことするわけないだろう。
つまりは‥‥‥‥広葉ってやっぱり鋭い!




