405 眠ってしまって
そういえば、私が料理を初めてしたのはいつだろう‥‥。
奈留になってから? ううん、前世の頃だろうから陸の時だ。
陸の‥‥しかももう小学生の時は結構作れるようになっていたような気がする。
まだ包丁で料理出来ていたあの時は、妹がなにもしないから、仕方なく二人分の料理を作ってたっけ‥‥。
何を作っても罵声を浴びせられ、でも何か文句を言われないものがあるんじゃないかって、色んな料理を覚えて試して、また言われて‥‥‥‥あきらめて。
あの時は本当に料理が好きじゃなかったし、なんで俺が妹の分まで、ってずっと思ってた。
‥‥今も自分以外の兄さんの分も私が作ってるけどね。
まぁ、その頃と今とは全然違うもんね。
今は家事大好きっこですから♪
やっていることは同じでも食べてくれる人っていうのは大事だ。
前世は作ることすら嫌だったけど、今世ではもっと作りたいとすら思う。
料理の腕もたぶん前世の時からほとんど変わっていないと思うけど、きっと今世で作る今の方が、美味しく作れる自信がある。
食べてくれる人が美味しいって笑顔で言ってくれるだけで、これからも頑張りたいという気持ちになれるから。
料理は技術や美味しい食材も大事なんだろうけど、でも私はやっぱり気持ちって大事なんだと思う。
そしてそういう気持ちがあるから料理が好きになったり、もっとやりたいって思うようになると思うから‥‥。
だから、今度は蕾ちゃんにも、そんな気持ちを────
◇◆◇◆◇◆
「───る。 奈留! 起きろー!」
「───えっ!? 何! ‥‥あれ? 兄さん? どうして‥‥‥‥あ!」
私は寝起きを頭を頑張って回転させ、現在の状況を確認する。
確か、蕾ちゃんのためにレシピを考えて、その後‥‥寝落ちしちゃったのか‥‥。
「はぁ、あれだけ無理はするなと言ったのに。 寝落ちするほど眠いなら、素直にベッドで横になってくれ」
「ご、ごめんね、兄さん? 別に意図して椅子に座って寝た訳じゃなくて、無意識で‥‥」
「それくらいわかるけどだな‥‥。 でも、もし次同じようなことがあったら、俺は次から奈留と一緒に寝る!」
「絶対嫌です!」
寝顔とかそういうの恥ずかしいじゃないですか‥‥。
というか、そういうのって普通兄の方が、嫌っていうと思うんですが‥‥。
「なんか、そんなにはっきり言われるとへこむな‥‥。 ま、まぁじゃあ朝食だな。 奈留の美味しいごはんが食べたく存じます」
「もう、なんですかその変な言い方。 了解です、少し待っててください」
そうして、兄さんは顔を洗ってくるといって、出ていった。
‥‥あ、毛布かけてくれてる。 あとでお礼言わないと。
それにしても何だか兄さん眠そうだけど、夜更かししたのかな‥‥というか、今日起きるの早いな‥‥。
まぁいっか。 よし、私も料理作らないとね‥‥。
その前にちゃんとレシピしまわないと‥‥あ、そうだ。
私は何となくだけど、頭に浮かんだ言葉をレシピに書いておくことにした。
「‥‥うん、これでよしっと!」
───大事な人の喜んだ姿を想像して作ること!




