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38 前世の‥‥

 私が前世において、好きだった女の子、磨北まきた祈実きさねさん

 話した数は、それほど多くはないかもしれないが、でもいつの間にか好きになっていた。

 それはもう無意識と言っていいほどに‥‥。


 前世で彼女が転校してきたのが私が高校二年だった頃。

 広葉とはクラスが離れ、特に友達がいないというクラス。

 磨北さんは、その私が所属するクラスに転校してきた。


 特に同じクラスだからといって喋ることもなく時は過ぎ、彼女とはじめて話したのはもう寒い季節で、場所は‥‥確か図書室だった。


 その日は広葉が、用事かなにかで、先に帰ってしまって、私は早く家に帰りたくないので図書室で時間を潰していた。

 私がボーッと本を読んでいると隣から声をかけてきたやつがいた。


「夕闇君ですよね? 同じクラスの」


 それが、磨北さんだった。


「そうだけど、なにか用かな?」


 その時は特に話したい気分ではなかったのだが、仕方なく笑顔で答えたような気がする。


「特に用はないんですが、放課後に図書室にいるのは珍しいなぁと思いまして」


 まぁ実際ほとんどの人間が部活に入っているので、放課後に図書室にいるやつは珍しいのかもしれない。

 それで偶然クラスメイトらしき人間がいたから喋ってみようと思ったわけか。


「別に部活には入ってないからね。 それに本が好きだから」


 本が好きというのは嘘だ。

 無論今は好きなのだが、別にこの頃は暇潰しが出来るならなんだって良かった。

 それに、そうやって言えば、私に特に興味は持たず、すぐに話が終わるだろうと考えたから。

 まぁ結果、思惑は外れてしまうのだが。


「そうなんですか! 私も本好きなんです。 良ければ少しお話ししませんか?」


 その嘘が運がいいのか悪いのか、話すきっかけになってしまった。

 今から思えば、幸運だったのだろうが。


 その後、図書室に暇潰しで行くと、たまに彼女と本の話をしていたような気がする。

 気がするというのは、はじめの方は興味がなかったからなのか、あまり出会ったこと、話したことを覚えていないから。

 好きになった時には勿体ないことをしたと後悔した。




 私は前世、磨北祈実さんが好きだった。

 それは真実だけど‥‥。

 だけど、今そうかと言われたら、正直よくわからない


 それはまず、私が女になったということ。

 それともうひとつ、私が好きだったのは、前世の彼女であり、私との関わりがない今世の彼女ではない。

 しかし、同一人物に変わりはないし‥‥。

 本当に自分でも訳がわからない。


 ‥‥私は今どう思っているんだろう。




 ◆◇◆◇◆◇




「あれ? 奈留ちゃん聞こえてる? おーい!」


「驚いているのか、考え事をしているのか、動かないな」


「じゃあ、今なら奈留ちゃんにどんなことをしても大丈夫だね♪」


「こうよう?」


「ヒッ!? 冗談です! すみません!!」


 私が考え事をやめ、気付いたときには、広葉は何故か兄さんに全力の土下座を見せていた。

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