394 何故かバトル
「頑張れ~!」
「頑張れぇ。 信くん、由南ちゃん」
何故か今、目の前で二人のスイーツバトルが繰り広げられようとしていた。
‥‥あれ? 何でこんなことになったんだっけ?
確か、信くんのお菓子を食べようと家に行くことにして‥‥。
◇◆◇◆◇◆
「信くんのお菓子楽しみだなぁ~。 ね、奈留ちゃん!」
「そ、そうですね」
好きな人のお菓子が食べられるのは素直に嬉しいけど、いきなりだったから迷惑じゃないかと考えてしまい、少し心配だ。
「本当に食べることぱかりなんだから‥‥ん? 奈留さん、あれって、灘実さん?」
信くんが指差す方向を見ると、そこには由南ちゃんの後ろ姿が見える。
「由南ちゃ~ん! お~い!」
由南ちゃんを呼ぶと、こちらを振り返り‥‥また前を向いて歩き出した。
‥‥何で無視された!?
私は全力で由南ちゃんを追いかける。
由南ちゃんの肩を叩くとようやく止まってくれた。
「由南ちゃん、何で無視するの!?」
「いや、怖かったし。 それが奈留だとわかっていてもね」
「わかってるなら無視しないでよ! って、そんなことじゃなくて、何してるの由南ちゃん? 学校じゃない日に由南ちゃんと外でばったり会うなんて珍しいし‥‥」
「それだと私が外に出ないみたいでしょうが。 普通に買い物の帰りよ。 奈留こそ何してるの?」
「信くんと祈実さんといるんだけど、今からスイーツ作りを‥‥」
まぁ、由南ちゃんは人の作るのとか興味ないかもしれないけどね。
「そう‥‥じゃあ私も行くわ」
「‥‥え、えぇ!?」
何故か特に理由も言わず、由南ちゃん自身で信くん、祈実さん二人に許可をとり、由南ちゃんも磨北家に一緒にいくことになった。
◇◆◇◆◇◆
その後、家についたのはいいが、何故か信くんと由南ちゃんが別々の物を作るようなことになり、祈実さんがどちらが美味しいか決めようと言い出して、初めに戻るわけなんですが、いやそもそも何故二人ともやる気満々なんだろう‥‥。
「何で由南ちゃん作る気満々なの‥‥?」
「最近、スイーツを作らなすぎて、不満がたまっているのよ」
だ、だからですか‥‥。
「信くんもさ、別に勝負しなくても‥‥」
「灘実さんが作るのが上手いのは知ってるから、一度どれくらいレベルが違うのか確かめてみたくてね」
二人ともやめる気なしと、いやまぁ平和的な争いだからいいんだけど、どちらが美味しいか決めるのは私と祈実さんなんだよね?
どちらか選ぶなんて、申し訳無くて出来ないんだけど‥‥。
「じゃあ、始めるよ~! 勝ったら奈留ちゃんがご褒美を」
「えぇ!? 私ですか!」
「あはは、冗談。 特に何かある訳じゃないけど、二人とも美味しいもの作りそうだから楽しみだね~。 あ、道具とかそういうのは譲合いの精神でお願いね。 それじゃ始め!」
祈実さんの言葉で二人は動き出した。
二人とも真剣そのものだね。
そうして、邪魔はしないように私達は出来る限りの小さな応援をしていた。