386 ひーくんと帰ってみると
蕾ちゃん視点です。
勉強会が終わり、皆でゲームをしているところに、ひーくんと一緒にゲームをする機会が訪れて、またしてもひーくんとの新しい思い出ができた。
勝負事だから頑張ったんだけど、ひーくん落ち込んでるし勝たない方がよかったかもしれないなぁ。
でも、そのあとのひーくんは笑って凄いねって言ってくれて嬉しかったし、これはこれでよかったかも‥‥。
そういえばゲームといえば、昔ひーくんのゲームを直したことがあったよね。
今も楽しそうだけど、あの頃からゲームが好きなんだね。
私も少しやりこんでみようかな‥‥。
まぁ、それはそれとして、皆で遊んだあと帰ることになったのだが、偶然かはわからないが、ひーくんと一緒に帰ることになってしまった。
‥‥いや、なってしまったって、別に嫌ってわけでは全然なくて、逆に嬉しいんだけど、ひーくんは迷惑じゃないのかなって思ってしまうので‥‥。
「蕾ちゃん、難しい顔してどうしたの?」
「い、いえ! 何でもないです。 パニックになんてなってませんから」
「それ、なってる人の言い方だけど‥‥」
困惑してますが、パニックにはなってません‥‥あれ? 何か変だよね‥‥。
とにかく! 私はひーくんの家は知らないけど、出来るだけ早めに、ここでいいですって言わないと‥‥!
そもそも、由南ちゃんも一緒に帰ってくれればいいのに、拒否してくるんだもん。
「でも、今日はありがとね蕾ちゃん。 勉強教えてもらっちゃって」
「お、お礼を言われるようなことはしてません。 ひーくんの為になるならなんだってやりたいですから‥‥」
「蕾ちゃんは優しいね。 まぁ、でも俺はちゃんとお礼したいからさ。 今度何処かでご飯とかごちそうするよ? 高いのは無理だけどね」
‥‥‥‥え?
そ、それはいわゆるデートというやつなのではないですか‥‥?
いや、落ち着いて、私! そんな勘違いをしてはいけない!
きっと、ひーくんはそんな気持ちひとつも抱いていないはず‥‥うん、なんかそんな顔してる。
つまり、ここは余裕をもって。 行くなら嬉しいです、といい断るならごめんなさいから入る。
うん、さっきお礼はいらないっていったばかりなんだから、惜しいとは思うけど、ちゃんと断ろう。
よし、大体の言う言葉は大体決まりましたね。
「ん、大丈夫?」
「え、あ、ちょ‥‥ちょっと考えさせてください! 私もう家近いんで帰ります! さようなら!」
あぁ、ひーくんを見ると断るなんてどうしてもできなかった‥‥。
「蕾ちゃ───」
ひーくんの言葉が聞こえる前に、私は逃げ出してしまった。
はぁ、それと頭で考えたことが全く口から出てこなかったよ‥‥。
そのあと、私は罪悪感を感じたまま自分の家まで帰った。




