385 勉強会の終わりは‥‥
「はぁ‥‥疲れたぁ‥‥。 少し休憩を‥‥って陸寝てるの!」
扉を隔てて勉強していた広葉が、こちらに来て兄さんの姿を呆然と見ていた。
「はい、そうなんです。 森田さんは頑張ってらしたんですね。 ‥‥あれ? 蕾ちゃんは?」
「少し一人にしてほしいって言われちゃって。 やっぱり嫌われちゃったかなぁ」
蕾ちゃんが広葉のことを嫌いになることは、かなりの確率でないと思うけど‥‥。
それでなくとも、戸惑って口調が変わるくらいなのに。
それでも、嫌われたとすると‥‥。
「何かあったんですか?」
「いや、勉強出来なくて不甲斐ないし‥‥」
「それは蕾ちゃんもわかってたことじゃないですか。 別に気にすることないですよ」
出来てたら勉強会するから蕾ちゃんに教えてほしいなんて言ってませんしね。
「フォローされてるのに、何だか心にグサッときたよ!? ‥‥じゃあ何でだろうね」
う~ん、蕾ちゃんが一人になりたい理由か‥‥。
「森田さん、蕾ちゃんに何したんですか‥‥」
「何やったって言われても‥‥勉強して‥‥。 あ、髪の毛に何かついてたから取ってもらって、感謝を言いたかったんだけど何だかうまく言えなかったから、無意識のうちに蕾ちゃんの頭をポンポンって‥‥」
それだ────!!
絶対それだよ! 嫌いになったとかじゃなくて、緊張してるところを頭を撫でられたので、限界突破しちゃったんだよ!
なんで、気付かないの広葉! って言いたいところだけど、当人になると変わらないものなんだよね。
きっと今蕾ちゃんは気持ちを落ち着けるために一人にしてほしかったんだろう。
「たぶんそれですね」
「やっぱり急にそんなことデリカシーがなかったかなぁ‥‥」
「いや~‥‥でも、森田さんは別に気にしなくても大丈夫ですよ」
「そ、そうなの? ‥‥そうなのかな」
あまりこういうことははっきり言わずに誤魔化していかないと、蕾ちゃんの気持ちが伝わっちゃうからね。
応援するのと、ばらしちゃうのは違うからね。
その後、広葉と兄さんが目標の分の勉強が終わっていたので、休憩を皮切りにうやむやに勉強会が終わってしまった。
まぁ、そんなに根を詰めるのはよくないしね。
「じゃあ、皆でゲームをしよう!」
「勉強終わって疲れてるんじゃないんですか?」
「大丈夫だ。 勉強で疲れてはいたが、ゲームをするということで今はピンピンしている」
いや、兄さんそれはがっつり寝ていたからであって、ゲームは関係ないんじゃ‥‥。
というか、いつの間に起きたんですか‥‥。
「いやまぁ、勉強はやったんでいいんですけどね」
「よし! ‥‥あ、蕾ちゃんも一緒にやらない?」
「え、いいんですか!」
広葉にそう言われて、蕾ちゃんはパッと笑顔になった。
そのあと、広葉は蕾ちゃんと対戦して、広葉がボコボコにされているのを皆で驚きながら見ていた。
広葉って結構強かったはずだけど‥‥。
蕾ちゃんってやっぱり何でも出来るんだと、その日改めて実感した。