381 上がり下がり
前半、奈留ちゃん。 後半が蕾ちゃん視点です。
『ひ、ひーくんに勉強を!?』
あ、蕾ちゃんめちゃくちゃ驚いてる‥‥。
「そうそう、今までは兄さんと一緒にやってて、私が見てたんだけど、よく考えたら蕾ちゃんの方が適任かなって。 一応私は兄さんを見るつもりだけど、そのそばでってことで‥‥」
『いや、あのその‥‥私無理です! ごめんなさい!』
あれー? いいっすよ~って言ってくれるかと思ったけど、全力で拒否されちゃった‥‥。
というか、凄く緊張してるっぽいね‥‥。
「本当にダメ?」
思わず拒否しちゃうのとかわかるけど、次拒否されちゃったら一旦は諦めようかな‥‥。
『ち、ちょっと、ちょっとだけ時間ください!────』
あ、切れちゃった‥‥。
でも、戸惑ってる蕾ちゃん、可愛いなぁ。 ま、気長に待ちますか。
◇◇◇◇◇◇
「どうしようどうしよう! ひーくんに勉強をなんて!」
『蕾様落ち着くのです! 別に二人きりになるわけじゃないんですから』
確かに奈留ちゃんもそばにいるって言ってたけど‥‥。
でも、教えるときはひーくんとっていうわけだよね。
「もし教え方がおかしかったりしたら‥‥私嫌われちゃうんじゃ‥‥。 しかも奈留ちゃんにも失望されて‥‥。 また一人になって‥‥。 もう死ぬしかない‥‥」
『なんでそこまで考えるんです‥‥。 もっと明るく考えるですよ!』
はっ! こういう時もちゃんと笑顔でいないと!
「‥‥‥‥あぁ! やっぱり無理‥‥」
『蕾様は、本当にテンションの上がり下がりが大きいのです‥‥。 蕾様。 奈留様の気遣いを無駄にするのはいけないと思うのです。 きっと奈留様は全然広葉様と会おうとしない蕾様のためにこうして誘われたのですよ。 たぶん』
「ぐっ‥‥そうだよね。 奈留ちゃんの優しさを踏みにじるのはいけないことだよね」
奈留ちゃんだって頭がいいし、しかも教え方も上手いんだろうけど、私みたいなのを誘ってくれるんだから。
『しかも、奈留様もいて、広葉様とお喋りも出来て。 まさに蕾様にとっては天国!』
アイちゃんのその言葉で私は先程までの後ろ向きな考えが一掃された。
「ひーくんとも楽しくお喋り‥‥‥‥あれ? そう考えると凄く楽しそう! というか、いますぐしたい!」
『いますぐは無理です‥‥。 それよりも今は奈留様に連絡することが大事なのです』
ちょっとだけ時間くださいって言って、切っちゃったもんね!
「そ、そうだね! ‥‥ってさっきの私ってどんなこと言ってた? もしかして奈留ちゃんに失礼なこと言ったり‥‥」
『はぁ、また後ろ向きに‥‥』
その後、奈留ちゃんに連絡したのはもう少しあとだった。




