375 ライバル心
「な、なんでいるんですか花さん‥‥」
この近くに用事があって、ここに泊まったとか‥‥いや今プレオープンだよね?
じゃあ、何をしに‥‥。
「なんでとは失礼ね。 この世界の私が作ったホテルを見てみたいと思ったら悪い?」
「いえいえ! 悪いってことはないんですけど‥‥」
でも、引っ掛かることは結構ある。
一つ一つ聞いていけばわかるかな?
「何?」
「いや、前世で同じホテルを作ってないのかなぁと思って‥‥」
基本的に蕾ちゃんが作るものは花さんも作っているだろうし‥‥。
「作ってないわ。 その時は忙しかったし、依頼を受けてもAIを預けるほど人を信用しなかったでしょうしね」
蕾ちゃんは、悪用されないかとか色々と考えてたけど、結局は受けたもんね。
花さんは門前払いしたってことかな? まぁ、余裕がなかったらこんなに長い計画をやろうって思わないもんね。
「なるほど。 でも気になるものなんですね、同じ自分でも」
「そうね。 一方的にだけど、対抗心を燃やしているわ。 同じレベルでライバルみたいな存在なんて、蔭道蕾以外にいないもの」
まぁ、確かに蕾ちゃんみたいな人、何人もいるわけないもんね。
ということは、花さんにとっては初めて争えるということなのかもしれない。
「自分自身がライバルってやつですね」
「まぁ、当然私の方が凄いけどね」
「そ、それはそうでしょうけど」
花さんは大人で、経験したことも違いますからね。
でも、もしここに蕾ちゃんがいたら、私の方が凄いっす! って言いそうだけどね。
「でも、やっぱり違う人生を歩めば、作るものも違うのね。 来てみて良かったわ」
「そうですか‥‥あ、そういえばここにどうやって来たんですか? 蕾ちゃんがエレベーターが昇る階を制限してたはずなんですけど」
「あ、そういうことだったのね。 機能してるのに、ちゃんと上まで上がらないから故障かと思って、私のAIのアイで無理矢理上がって来ちゃった。 AIがほぼ同じだからか、すんなりシステムに入れたわよ」
そ、それセキュリティ的に蕾ちゃんに言った方がいいかも‥‥いや、そんなアイちゃんレベルのAIなんて蕾ちゃん以外には花さんしか作れないよね。
「か、軽く行けるものなんですね」
「まぁ、私のアイだから出来たようなものよ。 あ、そうだ。 この前見せてあげるって言ってたわね。 ちょうど良いわ。 夕闇さん。 携帯の電源を落としてくれない?」
「あ、はい」
そういえば、蕾ちゃんのAIと花さんのAIは会わせたら駄目だったね。
私は自分の携帯の電源を落とす。
どんな子なのかなぁ‥‥やっぱりメイド服着てるのだろうか‥‥。




