36 転校生
朝のホームルームの時間、何時もは特に何事もなく終わるのだが、今日は違った。
前から噂になっていたことが真実だったのだ。
「えーと、さっさと終わりたいところだが、今日はこのクラスに転校生がくる。 どうでもいいけど、いじめはやめろよ。 後処理面倒だから」
詩唖先生はいつも通り、先生ではないような態度だった。
もう本音が駄々漏れてますよ。
後処理とか生々しい!
「せんせー! 転校生は女の子ですか、それとも男ですかー?」
クラスの男子が席を立ち、先生に質問する。
まぁ気になるところではあるな。
いい女の子だったら仲良くなって、兄さんとも仲良くさせたい!
「てめぇ、もうすぐ自分で確かめられるのに何故私に聞く? 答えるの面倒だろうが!」
ただ、気になっちゃっただけだよ。 そこまでいうか!?
‥‥また本音が漏れてるし。
先生の眼力により、クラスの男子は怯んでしまった。
あと、てめぇって‥‥もう本当に先生としておかしいから。
それ以前に女としておかしいから!
「ちなみに転校生は、男だ」
言うのかよ!?
さっきのやり取り無駄になったよ。
「じゃあ、入ってこい」
すると、教室の前の扉が開き、生徒が一人入ってきて、教卓の前にきた。
「はじめまして。 磨北信です。 よろしくお願いします」
へぇ~磨北くんね‥‥‥‥え、磨北って?
あの子と同じ名字だ。
でも、あの子が転校してくるのはまだ一年あとだし、関係ないのかな。
親戚とかかもしれないし、話す機会があったら聞いてみるのもいいかもしれないなぁ。
その後、先生が教室を出た瞬間に、一斉に皆が磨北くんに押し寄せていった。
何だか質問タイムとか漫画とかではよくあるけど、現実でもあるものなんだなぁ。
その質問タイムは一時間目のチャイムが鳴るまで続いた。
◆◇◆◇◆◇
「へぇ、転校生ですか。 この時期に珍しいですね」
「そうなんだよ。 珍しいよねー」
部活が終わり帰り道、由南ちゃんと小乃羽ちゃんで三人で帰っていた。
「どんな人だったんですか?」
「優しそうな人だったわね」
「そうだね。 まだ話してないからわからないけどね」
結局、今日一日話すタイミングが掴めず、喋らずに終わってしまった。
「でも、その人と仲良くなるならお兄様にバレないようにしないといけないですね」
「え、なんで?」
「え? だ、だって‥‥バレたらその人‥‥なんでもないです!」
「あはは、仲良くなるぐらい別に大丈夫だよ」
田神くんの時もなにもなかったしね。
「そ、そうなんですか? そういえば、その人の名前は何て言うんですか?」
「磨北信って名前だったよね?」
「うん、そうだよ。 でも、どうして?」
あの子と同じ名字だから何だかすぐに覚えることができた。
いつもだったら覚えるのに時間がかかるんだけどね。
「いや、何だか気になっちゃって。 あ、私道こっちなんで失礼します」
「またね」
「じゃあね」
その後、小乃羽ちゃんと別れた私は、由南ちゃんと二人で喋りながら、家に帰った。




