371 送る勇気
「由南ちゃんにはああ言ったものの‥‥全然何も浮かばない!」
私の頭が固いからかなぁ‥‥。
やっぱり由南ちゃんに何か聞いた方がよかっただろうか。
‥‥ダメダメ! また甘えが出てる。
それでも、結局は全く一文字すら打ち込んでいないわけで。
‥‥まぁ、まだ休みはたくさんあるしね。
このお泊まりが終わった後からでも遅くはな────
───後悔だけはしないように生きてください。 後回しはダメですよ?
「え‥‥」
私は廊下で会った女の人の言葉を思い出していた‥‥。
何故急に思い出したのかはわからないが、何故かそれが頭にパッと浮かんだ。
‥‥そうだよね。 後回しはダメだよね。
言われた時はどういうことかわからなかった‥‥いや、今も本当の意味はわからないけど、きっとこういうことを言っていたんじゃないかってそんな風に思えてくる。
あの人は私がこういう性格だって短時間でわかったから最後にあんなことを言ったのだろうか、それとも私を知っていた‥‥そんなはずはないよね。
でもなんだか、先程よりも元気が出たのは確かだ。
私は廊下で出会った彼女に、心のなかで感謝しつつ、もう一度真剣に考えてみることにした。
そんな時、ふと部屋にある大きな鏡に私が映っているのが見え、猫の着ぐるみの格好をしていることに、自分自身なんだか笑ってしまう。
そういえば、お風呂から上がったときは特に気にせず着ちゃってたけど、あれって違うものを着るチャンスだったのかも‥‥。
まぁ、二人に言われるだろうし、この格好のままになっちゃうだろうけど。
それにしても自分がこんな格好をしているなんて可笑しいなぁ‥‥。
‥‥‥‥あ! 信くんと行く場所で、楽しめそうな場所思い付いた!
私は早速、思い付いた所に信くんを誘うため、メールで信くんに連絡をするため文字を打ち込む。
先程までと打って変わってサクサク文字が打ち込めることに自分自身も驚いているが、今は達成感の方が大きいかな。
よし、いけた。
後は送信するだけっと‥‥ちょっと緊張するなぁ‥‥。
一回、文章を見直してから送信し───
「奈留ちゃん! 何してるっすか!」
「ひゅわ!? び、びっくりした‥‥蕾ちゃん驚かさないで‥‥って送信しちゃってる!?」
「え、え、どうしたっすか奈留ちゃん!? 私悪いことしちゃったっすか?」
先程とは一変して、蕾ちゃんがおろおろしていた。
「あ、ううん、大丈夫だよ。 元々押そうとしてたものを押しただけだから」
「そ、そうなんっすか? よ、よかったっす~‥‥」
別に蕾ちゃんに、怒ったりなんてしないから、そこまで気にする必要ないのに。
でも、自分の覚悟が決まってから送信したかったっていうのはあるかな‥‥まぁ、送れたら一緒かな?