352 即戦力
「まぁ、そこで提案なんだけど、磨北くんを誘えばいいんじゃないかしら?」
「‥‥え! 信くん!?」
それはつまり、二人で手伝うってことだよね‥‥いや、でもそこで雰囲気が悪くなったりしたら、私たぶん泣いちゃうよ?
‥‥でも、由南ちゃん以外に即戦力になりそうなのって、信くんぐらいだよね。
「奈留が誘えば、予定があってもいいって言ってくれそうだしね」
「いや、それは困るから! そんなこと言われたら誘えなくなっちゃうよ!」
それでなくとも、あまり迷惑はかけたくないのに‥‥。
「あはは、ごめんごめん。 ちゃんと聞いたあと言えばいいのよ。 それならいいでしょ。 それとも他の人誘う?」
「他の人?」
「ほら、蕾とか‥‥‥‥自分であげといてなんだけど駄目ね。 店が機械まみれになるわね。 料理もちゃんと作れないし‥‥」
めちゃくちゃ言うね、由南ちゃん!?
しかし、蕾ちゃんならって想像出来てしまうんだよね‥‥ごめん、蕾ちゃん!
「まぁ、忙しいだろうしね」
今はアイちゃんの受け渡しや交渉とか何やらがあるらしいからね。
「じゃあ、お兄さんとか?」
「あー駄目だね。 学校があるし‥‥」
「そっか、高校はまだ休みじゃなかったわね」
同じ理由で広葉や祈実さんも誘えないだろう。
そうなるともう、信くんを誘うしかないわけで‥‥いや、嫌なわけじゃないよ、これは絶対!
「うん。 ここは勇気を出して、信くんを誘ってみるよ」
「ごめんね、奈留」
「いやいや、由南ちゃんには、感謝の気持ちしかないよ」
今日だって、見るだけって言ってたけど、手伝ってくれたしね。
よし、由南ちゃんが気にしないようにするためにも、信くんをちゃんと誘えたらいいなぁ‥‥。
◇◆◇◆◇◆
『いいよ』
「‥‥‥‥いいの!?」
電話で信くんにお願いしてみると、一言返事でオッケーをもらいました‥‥悩んでたのは一体なんだったんだろう‥‥。
予定も聞いたところ、暇なので全然大丈夫なのだそう。
でも、デートじゃなくてお手伝いなんだから、浮かれて仕事に身が入らないとか、そういうことがないようにしないと!
『じゃあ、明日奈留さんの家の前まで行くよ』
えぇ、私が誘っておいて、信くんに来てもらうってことでいいんだろうか、でも一緒に行くっていうのも捨てがたいし‥‥。
「え、あ、うん。 わかりました‥‥お待ちしてます‥‥」
あぁ、変な感じになっちゃった!
『それじゃあ、明日』
「うん、明日‥‥‥‥」
‥‥ふぅ、緊張したけど、ちゃんと誘えてよかった。
あ、由南ちゃんにもあとでメールで報告しておこっと。




