351 報酬は‥‥
段々と日が落ちてきて、客もいなくなったお店。
片付けも一段落し、やることがなくなってしまった‥‥。
「今日はこれくらいかな? 二人とも、ありがとう。 お手伝いは今日はおしまいだね」
「そうですか‥‥」
まぁ、流石に夜ずっといるっていうのは色々と駄目なのはわかるが、でもバイトじゃないからセーフみたいな‥‥いや、蓮佳さんの迷惑になるかもしれないしね。
「夕闇ちゃん、灘実ちゃん。 はい、お金。 少ないけど」
「いやいや、いりません!」
「そうよ、別にお金が欲しくてやった訳じゃないんだし」
手伝いに来たことで負担になるようなことはないようにしたいんだよね。
まぁ、それに私お金あっても、食費くらいにしか使わないしね。
「でも‥‥」
う~ん、蓮佳さんの気持ちもわかるから、あまりきっぱりとは言えないんだよね‥‥。
「‥‥そこまでいうなら、今度、美味しいケーキを作ってください。 美味しく食べますよ───奈留が」
ちょ! 由南ちゃん!?
確かに美味しいし、好きだからいい提案ではあるけど、由南ちゃん甘いもの苦手だからって、私が食べるって強調しなくても!
いやでも、それだと由南ちゃん何もなくなるけど‥‥。
「灘実ちゃんはいいの?」
「私はほら作るのが好きですから。 色々と教えてもらって、それだけで満足ですよ」
あれ‥‥? 何だか私だけもらっちゃって、凄く我が儘な子みたいに見えてない? 大丈夫?
「そっか‥‥二人ともありがとね! 灘実ちゃんも絶対にお礼するし、夕闇ちゃんには美味しいの作ってあげるから♪」
まぁ、これでよかったよね、うん。
◇◆◇◆◇◆
「私、明日手伝えないから」
帰り道、突然由南ちゃんが言ってきた言葉に、私は理解するのに少し時間を要した。
「‥‥え? 何で!?」
「予定があってね。 そもそも今日だけだと思ってたもの」
「そ、そうなんだ‥‥」
確かに私もマスターが熱だなんて思ってなかったから、軽い気持ちで由南ちゃんに言ったっていうこともあり、明日の予定なんて聞いてなかったけど‥‥。
そうか‥‥でも由南ちゃんがいないのは厳しいな‥‥。
「そんな悲しそうな顔しないで、奈留‥‥。 私も手伝いたいんだけど‥‥」
「ううん、そもそも、無理を言ったのは私の方なんだから、由南ちゃんは気にしなくても大丈夫だよ。 うん、私が頑張れば済む話だしね!」
「もう、また無理しようとして‥‥。 職業体験の時、熱でたこと忘れたの?」
あ、あれは色んなことがあったからで‥‥でも否定できない‥‥。
由南ちゃんに心配とか迷惑はかけたくないからね。
「じ、自重します‥‥」
「うん、そうしてね。 絶対だからね?」
私ってそんなに信用ないですか!
なんだか、前にも同じようなことあったような気がするよ!?




