349 表情が悲しそうな‥‥
客足も段々と少なくなって、ようやく一段落で、私達は少し座ることにした。
「そういえば、マスターはお一人で寝ていらっしゃるんですか?」
「うん、看病するっていったら、いいって言って、カフェに行けって言われちゃって。 特に誰か代わりに見てくれる人もいないのに‥‥。 まぁ、隆は一人でも大丈夫なんだろうけど、こういうときくらい、一緒にいてくれって言ってくれてもいいのに‥‥」
蓮佳さん‥‥。
いつも笑顔で、元気な感じだけど、こういう悲しい顔もするんだね‥‥。
「もし、風邪で熱が出ていたら、移してしまうかもしれないと思って、突き放しただけですよ」
うん、マスター優しいもん。
きっと、そういう理由があったんじゃないかなぁ‥‥。
「そうなのかなぁ‥‥。 うん、そう思うことにするね。 ‥‥あ、お客さん来たね」
「じゃあ、私行きます!」
ちゃんと蓮佳さんを元気付けたかったけど、あとは由南ちゃんがやってくれるかな?
◇◆◇◆◇◆
「いらっしゃいませ! お待たせしまし‥‥花さん!?」
そこにいたのは、前世の蕾さん、通称花さん。
珍しいって思ったけど、ここで見るのは二度目になるのかな?
もしかして、常連さんなのかな、花さん。
「久しぶりね。 何してるの? 強制労働?」
「違います! ここのマスターがお休みしていて、お手伝いしてるんですよ。 花さんは息抜きですか?」
「えぇ、最近は、先生とひーくんを戻す最後の調節をしていてね。 気が滅入りそうだったから、少し落ち着くために来たのよ。 戻す件はひーくんからも聞いてるんでしょ?」
「はい、聞いてます。 喜んでもいましたけど、複雑そうな顔もしてましたね」
「‥‥そう。 ひーくんらしい。 先生の方も、喜ぶかと思ったら、微妙な顔をしてたわね。 まぁ、先生の方はひーくんの頑張ったものを何もしていない自分が奪っていいのかなんて思っているんでしょうけどね」
やっぱり、相性診断で高い数値を出した二人だからか、同じような反応をするんだね‥‥。
あとは二人とも、優しいから色んな事を考えちゃうんだろうなぁ。
「花さんはどう考えてるんですか?」
「私は戻ってほしいわよ。 そうじゃないとひーくんにちゃんと甘えることができないもん」
「あはは‥‥」
あ、やっぱりそうですよね。
「‥‥‥‥でも、先生をしているひーくんも、とてもいきいきとしていたから、最近は先生のひーくんもいいなって思っていたところだったけどね」
「花さん‥‥」
「戻れっていってるのは私なのに、何言ってるんだろうね」
いえ、何だかその気持ち、少しわかるような気がしますよ‥‥。




