343 思い出の本
そういえば、私達のお互いの前世のことがわかるきっかけになった本がここにはあったよね。
【死と夢の楽園】
皆死んじゃって、悲しい話、そんな印象だったから、あのときは信くんが羨ましいっていう理由があまりよくわからなかったけど、今なら‥‥うん、少しわかるような気がする。
「信くん、あの本ってまだあるのかな?」
「死と夢の楽園? あるんじゃないかな? いや、でも結構ぼろぼろだったし、もしかしたら無くなってるかも‥‥」
たまに好きだった本が無くなっている時あるもんね‥‥。
でも、やっぱりあってほしい‥‥。
「ちょっと、探してみよっか。 前の場所にはなさそうだから、私はもう少し奥に行ってみるよ。 面白い本もあるかもしれないしね」
「じゃあ、僕は反対側を見てくるよ。 少ししたらまた戻ってこよっか」
「うん、十五分くらいしたら一度ここに戻ってこようか」
「そうだね」
まぁ、それでもなかったら館員さんに聞いてみようっと。
もしかしたら、貸出し中かもしれないし。
◇◆◇◆◇◆
「う~ん、無いなぁ‥‥」
やっぱり別の場所に移されたりとか、そういうこと? それとも誰かが借りていたりとかなのかな‥‥?
「なに探してるんだ?」
突然、女の人が声をかけてきたが、何だが男っぽいというか‥‥あれ?
「えっと、死と夢の楽園っていう本を‥‥‥‥広葉!?」
聞いたことのある声だなとは思ったが、図書館に広葉がいるとは思わなかったから、全然浮かばなかったよ‥‥。
というか、卒業式だったのに、先生の仕事は終わったのかな?
「こら、陸。 公共の場所なんだから大きな声はやめておけ。 あと俺の名前もな」
「あ、あぁごめんなさい、詩唖先生‥‥いや、先生も陸って‥‥」
「いや、別に普通の話す分には構わないぞ? さっきは声のボリュームが大きかったから言っただけでな。 まぁ、それはいい、何か探し物なら手伝うが‥‥」
「ありがとう、でも‥‥う~ん‥‥無さそうだから、信くんの所に戻ろうかなぁって思ってるよ。 あ、広葉も探し物なら手伝うよ?」
「大丈夫、思った以上に、すぐに終わったからな。 でもないなら初めから館員に聞けばいいのに‥‥」
「いや、何だが自分で見つけたいっていう気持ちがあってね」
何か達成感とか色々あるし‥‥。
「あ、これじゃないか?」
「え、え!?」
あ、死と夢の楽園だ‥‥いくら探しても見つからなかったのに、広葉凄い‥‥。
「あ‥‥見つけちった、すまん‥‥」
「いやいや、ありがとね広葉!」
見つけてもらっといて、謝られるっておかしいよね、絶対!
私じゃ見つけられなかったかもだから、広葉本当にありがとう!




