328 広葉と電話で
私はメールで信くんが帰ってきたことを確認したと同時に、広葉に電話をかけた。
夜だから、明日の方がいいかもしれないが、どうしても我慢できなかった。
本当のことをちゃんと知りたかったっていうのもあるしね。
まぁ、広葉なら私のことをわかって今メールしてきたんだろうし、きっと夜でも広葉は起きているだろう。
そうして、電話が繋がったと同時に色んな気持ちでいっぱいになり、私は色々とすっ飛ばして本題に入ってしまった。
「信くんが帰ってきたってホント!?」
『───うぉっ! ビックリした‥‥まさか陸の方から電話をかけてくるとは思わなかったぞ。 あと急に大声は驚くからやめてくれ』
「どうしても気になっちゃって‥‥ごめんね? 時間の都合が悪いなら明日にするけど‥‥」
『いいよ、今夜は別に何もやることはないからな。 それで、さっきのはどういうことだ? メール見てないのか?』
「いや、本当に信くんがいるのか、気になっちゃって。 直接聞いた方が信じられるというか‥‥」
全然信じていないわけではないが、一週間もいなかったこともあり、どうしても、ちゃんと聞きたかった。
『あぁ、ちゃんといたよ。 もう、帰っちまったけどな』
「あ、そうなんだ‥‥」
何だか少し残念な気持ちもあるが、信くんがこの世界に帰ってきてくれたという方が嬉しいのか、幸せな気持ちになっていた。
まぁ、でも帰るのは当然だよね。きっと祈実さんも心配していただろうから、早く帰って安心させてあげたかっただろうし。
「あいつ、行ったときと帰ってきた時じゃ、顔付きがまるで違っていたし、何か心境の変化でもあったのかもな」
「へぇ‥‥」
心境の変化って何だろう‥‥まさか新しく好きな人ができた、とかそんなのだったり‥‥いや、やめておこう。 考え出したらきりがないよ‥‥。
「微妙な反応だな。 マリッジブルーってやつか?」
「違うから! そんな段階まで、まだいってないから!」
「まだって‥‥‥‥まぁ、俺としてはそうなってほしいところだがな」
まだ付き合ってすらないんだから‥‥というか、信くんにフラれる可能性もまだあるわけで‥‥。
「なに言ってるのさ‥‥。 あ、そういえば、なんでこんなに遅かったか理由って何だったの? 故障?」
「いや、俺も詳しくは聞いていないが、何か奇妙な出来事があったらしい。 まぁ、特に何事もなく帰ってきたから、危険なことではなかったんだろうがな」
「そっか、それならまぁ‥‥。 私も信くんに、会ったときに聞いてみようかな‥‥」
「あぁ、そうしてくれ。 というか、明日会えばいいんじゃないか? ちょうど学校休みだし」
「‥‥え!? それは心の準備が‥‥」
「それ、いつまでも会わないパターンだぞ」
「うっ‥‥わかった。 学校に行く頃には、ちゃんと覚悟を決めるよ」
「ちょっと遅くないか? まぁいいか。 じゃあ、俺の方からも電話をかけるかもしれないが、今日はこの辺で」
「あぁ、うん。 ありがと、広葉」
「じゃあな、陸」
そして、電話が切れてからも、私はなんとなくボーッとして、寝ようとしなかった。
でも、信くんと、どういう風に話せばいいのかな‥‥笑顔か‥‥はたまた‥‥う~ん。




