321 ドキッとする質問
「まぁ、事故の話はこれくらいにしておいて‥‥私、奈留に聞きたいことがあるんだけど‥‥?」
ん? 何だろう‥‥‥‥あ、もしかして信くんがこんなに休んでいるのがおかしいと言って、探ろうとしているんじゃ‥‥。
今まで、何も言ってこなかったのが逆に不思議なくらいだもんね‥‥。
どどどうしよう! なんてごまかしたら‥‥風邪? いや弱いか‥‥入院! は大袈裟すぎだし、バレそうだし‥‥。
一人旅に‥‥‥‥一番あり得ないな‥‥。
家族で旅行と言ったとしても、祈実さんがいるからね。
ここは、全力で知らないふりをしなければ。
大丈夫、ポーカーフェイスで無心になるんだ‥‥。
「無心‥‥無心‥‥‥‥」
「奈留、聞いてる?」
「なななんでございましょうか、由南ちゃん」
うん、無心とか無理です、というか意識しすぎでおかしくなりましたね。
「どうしたのよ。 いや、確かに奈留にとってはそうなる質問なのかもしれないけど‥‥」
あぁ、もうダメだ‥‥。
親友に嘘とか無理です、本当に!
「えっと‥‥質問はなんでしょうか?」
「なんで、敬語なのよ。 いや、磨北くんと次会った時に、今度こそ言うのかと思って、聞いておきたかったんだけど?」
えっと、言うのかって、あの付き合ってくださいを言うのかってことだよね‥‥‥‥ん?
「‥‥‥‥そっち!?」
何だ、そちらの方ですか‥‥‥‥いやいや、そっちでもこっちでも両方、私にとってはドキッとする質問ですね!?
確かに一度は言おうとしたわけだけど、あのときの勇気が今もあるかと言われたら‥‥‥‥。
ま、まぁ、今は信くんの方ではなかったので、それはよかったよ‥‥。
「ん? そっちってどっち?」
あ、口に出てた‥‥‥‥まずい、せっかく違う話だったのに‥‥。
でも、嘘は言えないし‥‥というか、嘘ついても由南ちゃんにはバレちゃうし。
「いや、てっきり信くんが一週間も休んでいるから、理由とかそういうのを聞いてくるものかと‥‥。 そして、そのあと探しに行くのかと思ってました」
「別に聞かないし、行かないわよ。 休んでいるのは個人の自由なんだし、そういうことは詮索しない方がいいわ。 そんなの本人が来てからいくらでも聞けるしね」
由南ちゃんって、本当に大人だよね。
たぶん、私が理由知らなかったら、凄く落ち着かない感じになると思うのに。
「私、由南ちゃんを見習います!」
「何よ、急に‥‥。 まぁ一番の理由は特に興味が無いからだけどね」
結局、そういうこと!?
いやまぁ、由南ちゃんにとっては友人の好きな人ってだけだもんね‥‥。
うん、こういうところは見習わないでおこう‥‥。
「なんか由南ちゃんっぽい理由だね‥‥」
「そう? ありがとう」
いや、褒めてないですよ、由南ちゃん!
 




