319 ぼんやりとした日常
奈留ちゃん視点に戻ります!
信くんに好きだと言ってもらえた日から、もう一週間くらい経った。
今でもあのお祭りの時のことを思い出せば、心が温かいような、そんな気持ちになる。
‥‥でも、それと同時に付き合ってくださいと言えず、あと一歩を踏み出せなかった自分の不甲斐なさも思い出してしまい、辛くなる。
教室で、信くんの席を見ても、今日も空席で‥‥。
広葉はすぐ帰ってくるって行っていたのに、もう一週間も経ってしまっている。
正直、何か危険なことがあったんじゃないかって、そう思ってしまい、今も不安でいっぱいだ‥‥。
もし、このまま信くんが帰ってこなかったら‥‥いやいや、そんなネガティブなことを考えるのはやめよう。
もっと‥‥帰ってきたら笑顔でおかえりって言えるような‥‥なんか夫婦みたいじゃないか、それ‥‥‥‥そ、それは恥ずかしいから無しで‥‥!
でも、きっと信くんには、大切なことがあって、こんなに遅くなってるんだよ、きっと。
うん、それくらい信じて待っていないとね。
よし、今日はちゃんと前を向いて頑張ろっと‥‥もうお昼だけど‥‥!
「奈留、あまり人前で変顔はやめておいた方がいいと思うわ」
「え‥‥‥‥由南ちゃん、何時から隣にいたの!?」
現在、昼休み中で、何となくお弁当も開かずにボーッとしていた私だったが、いたなら声かけてくれたらいいのに!
というか、変顔してないですからね! 確かに顔はコロコロ変わっていたかもしれないけど‥‥。
でも、一人で変顔も中々ダメだと‥‥まぁ、そういうことを言ってるんじゃないだろうけども。
「ずっといたわよ。 全然気付かないし‥‥せっかく忍び足でいったのに‥‥」
「気付かれようとしてないよね!?」
絶対に楽しんでたよね!
「それは冗談として‥‥‥‥また磨北くんのこと考えていたんでしょ? さすがに一週間も学校に来てないと仕方がないとは思うけど‥‥」
「うん‥‥でも、さっき決めたんだ。 ちゃんと前を向いて頑張ろうって」
「そう? なら、余計な心配だったわね」
あ、やっぱり心配してくれてたんだね。
由南ちゃんは本当に優しい‥‥。
「余計じゃないよ、ありがと!」
「どういたしまして。 でも今から立ち直るって何だか可哀想ね」
‥‥え? 可哀想?
「え、どういうこと?」
「いや、午前中の美術の女の先生、いつもだったら夕闇さんがきちんと授業聞いてくれるのに、今日は聞いてない! って悲しんでたわよ」
「えぇ!? 確かに上の空だったけど、私だけ聞いてないわけじゃなかったよね!?」
いやまぁ、先生の中では話す方の先生だけど‥‥。
「いつも真面目だからね‥‥」
でも、もしそうなら一言でも謝った方がいいよね。
「‥‥うん、じゃあ謝ってくるよ!」
「本当に真面目なんだから‥‥奈留は‥‥」
やっぱり、少しでも嫌なことをしてしまって、そのあと関係が悪くはなりたくないからね。
美術準備室にまだいるかも!




