312 消えたもの
引き続き、磨北信くん視点です。
一応、アイちゃんが進めてくれたんだと話し、蔭道さんにもお好み焼きを食べていただくことに‥‥。
「あ、中々美味しいね‥‥」
『蕾もわかってくれますか!』
「いや、でもこれって磨北さんの料理が上手いからじゃないの? ガスバーナーいらなくない?」
『ガスバーナーをバカにするとは‥‥蕾許すまじ!』
あはは、まぁ、ガスバーナーでする方も美味しかったねと言ってくれたということでいいんじゃ‥‥。
というか、アイちゃんガスバーナー好きすぎませんか?
ガスバーナーに何の思い入れが‥‥。
◇◆◇◆
あ、そういえば、先程の蔭道さんの大声って何だったんだろう‥‥。
「蔭道さん」
「モクモク‥‥‥‥ん? どうしたの?」
「さっき、ないー! って何だか叫んでませんでした?」
そう言うと蔭道さんは、食べる手が止まり、何かを考えるように沈黙した。
「‥‥‥‥‥‥あっ! 忘れてた! あれが、あれがないの!!」
うっ、急に声量が上がったので、一瞬ドキッとしたよ‥‥。
それで、一体どうしたというのだろうか?
「あれって、何なんですか?」
「あの、朝言っていた───」
朝? 朝っていえばタイムマシンがすでに終わっていることを聞いて、そのあとは‥‥。
‥‥‥‥ん? あれか‥‥。
「───帰ってきた物忘レンくん極よ!」
『名前ダッサ!』
「今はそんな名前とかそういうことじゃないわ! 無いのよ、物忘レンくんが!」
えっと‥‥それはつまり何処かへ行ってしまったと?
『えー、何処かに置き忘れたとか、違うところに置いていたとかはないんですか? 蕾たまにあるじゃないですか』
「今回は本当の本当に無いのよ! ちゃんと朝に置いた場所くらい覚えてるもの!」
『‥‥‥‥でも、蕾。 無くすってあり得ないことですよ? だって磨北さんは料理をしてましたし、私も近くにずっといました。 それに今日は玄関の扉は一度も開いていません。 蕾が無くす以外に無くなるなんて‥‥』
まぁ、宅配便も来てませんしね。 というか、蔭道さんの部屋にも誰も入っていないんじゃないですかね?
「絶対におかしい‥‥。 誰か盗んだやつが‥‥。 あーもう! このAIがガスバーナーとか言わなければ、すぐに話せてたのに!」
『ちょっ、私のせいですか!? 忘れてたのは蕾でしょ!』
あ、マズイ、二人の喧嘩が始まりそう‥‥止めなきゃ───!!
「ま、ここは原因を探しますか!」
『そうですね!』
何だろう‥‥切り替え早いですね‥‥‥‥。
やっぱり、蔭道さんですね‥‥さっきまで慌てていたはずなのに、今、凄く冷静‥‥。
アイちゃんも慣れているみたいだし、これがいつものことなのかもしれないね。




