303 聞こえた声援
引き続き、磨北さん視点です。
私はお墓の前まで、歩いていく。
ゆっくりと、一歩一歩踏みしめて‥‥‥‥。
前世に祈実としていたときよりも、たぶんだけど辛い。
‥‥きっと、私だけ生き残ってしまった‥‥生まれ変わってしまった‥‥そんな罪悪感も、増えたからだろう。
お墓に近づいていくごとに、どんどんお墓が見えるようになってきた。
もしかしたら、汚れたりしてるかもと思ったが、さすがにそれはなかったようだ。
きっと両親が、綺麗にしてくれているのだろうけど‥‥。
両親‥‥か‥‥。
信くんと私、両方をなくした親の辛さを考えると、悲しい気持ちになってくる。
違うところでちゃんと生きてるよって、そう言うことさえ出来れば‥‥‥‥でも私にはそれは出来ない‥‥。
『‥‥さん‥‥磨北さん、大丈夫ですか?』
「あ、うん、大丈夫だよ。 少し考え事をしてただけだから」
私は信くんのお墓の前に、膝をついた。
今世の世界に行ってから、こんなにしっかりとお墓の前に来るのは初めてだ。
‥‥久しぶりだね、信くん‥‥。
今の私はどんな顔をしているのだろう‥‥。
笑顔‥‥ではないだろうな。
信くんは私をどう思っていたのか、私は今でも考えることがある。
信くんは許してくれているだろうか、まだ怒っているだろうか‥‥それとも、元々怒ってなかったり‥‥いや、それはない‥‥かな?
家族として、何も出来なかったんだから。
いつもは逃げてしまっていたけど、今日はちゃんと謝ろう。
そして、今度はちゃんと大切な人を守っていけるような人間になるって、ここで、誓うおう。
「信くん、ごめんね。 駄目な姉だったよね。 あの時こうしておけばって考えたこと、何度もあったんだ‥‥。 だけど、結局悲しくなるだけで、私は逃げ出して‥‥。 でもね、私はもう逃げないから。 大切な人を守れるようなそんな人間になるって誓うから」
だから、信くん。 私の人生を見守っていてください。
────頑張って、きさねぇ。
「‥‥え?」
今、声が‥‥。
「アイちゃん、今喋った?」
『え? いえ、黙っておいた方がいいと思ったので、静かにしてましたけど‥‥』
じゃあ今の声って‥‥。
もしかしたら、幻聴なのかもしれないが、どうしても私はその声が、信くんが私に直接話しかけてくれたんじゃないかって、そう思った。
怖いとかそういうのではなく、何て言うか、届いたんだと思って感動したっていうか‥‥嬉しかった。
うん、さっきのは絶対に信くんだと‥‥私はそう思うことにした。
信くんが応援してくれたんだと思うと、私は今まで以上に頑張ろうという気持ちがわいてくる。
‥‥信くん。 お姉ちゃん、頑張るから。
今度こそ、後悔しない人生をきっと送ってみせるからね。