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302 そばにいたいから

引き続き、磨北信くん視点です。

 その後、私は目的地に行ってもいいか、蔭道かげみちさんにアイちゃんを経由して連絡をとり、知っている人が、もし、この場にいた場合は絶対に近づかないことを条件に、許可をもらった。


 この世界に着いた時が、もう昼を過ぎていて、そのあと探索をしていたので、時間的にはもう日が暮れ始める時間帯だ。

 少し、早めに歩いた方がいいかもしれない。


『でも、つぼみが知り合いに会うなって言ってたけど、偶然だってあるんじゃ‥‥。 それに知り合いっていうと誰になるんだろう?』


「まぁ、姿は違うから自分から話しかけなければ大丈夫だと思うけど‥‥。 知り合いの方は、友達とか両親とかその辺りのことだろうね」


 まぁ、今の私はたぶん出会わないようになっているだろう。

 出会ってしまったら、未来が変わってしまうだろうから。


 無理に出会おうとしても、頭が痛く? なるんだよね。

 いや、それでも、何らかの欠陥で会った場合を蔭道かげみちさんは危惧しているのかもしれない。


『じゃあ、行きますか。 磨北まきたさんの目的地に』


「‥‥うん。 行こっか」




 ◇◆◇◆◇◆




 私が行きたかった‥‥いや、行かなければならないと思っていた場所が目の前に見えてきた。

 その場所が見えてくると同時に足取りも重くなってくる。


 ‥‥やっぱり、まだ怖いのかな、私‥‥。


『ここが、磨北まきたさんが来たかった場所‥‥‥‥墓地、ですか?』


「うん、そう‥‥。 ここに弟が眠ってるんだ‥‥」


 目の前にある場所はそう‥‥弟のお墓。


 どうしても私は前世に来て、ここに来なければならなかった。

 弟のためにも、そして‥‥‥‥自分のためにも。


『そうなんですか‥‥弟さんが‥‥。 じ、じゃあ今日は好きな人が出来たよって報告に来たとかですか?』


「‥‥ううん、僕がここに来たかったのは‥‥どうしても、お墓の前で、ちゃんと弟に謝りたかったからなんだ」


『え? なんで謝るんですか?』


「姉として、何もしてあげられなかったこととか‥‥。 私が前世に生きていた時には、お墓に来て、お供えをしたりはしていたんだけど、どうしても何もせずに前に行くと、色んな事を思い出しちゃって、いつも逃げるようにして帰っちゃってたんだ」


『でも、それは磨北まきたさんのせいじゃ、ないんじゃ‥‥。 それに逃げるくらい誰だってあることじゃないですか?』


「ううん、いつまでも逃げているままじゃ駄目だって思ったの。 そうしないと私は前向きに生きているあの人と一緒になる資格なんてないと思うから‥‥」


 だから、私はちゃんと逃げずに謝りたかった。

 それが、私が今世に行ってからも、突っかかっていた、心の中の後悔だった。

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