298 AIと蔭道さん
引き続き、磨北信くん視点です。
ホログラムに映し出された、女の子は蔭道さんの方をじっと見つめたまま喋らない。
あれ? 蔭道さんが作っているから、もう少し凄いものを想像していたけど、話しかけないと喋らないとかそういうのなのかな?
蔭道さんもAIをじっと見つめてるし‥‥。
そう思っていると、ホログラムに映るAIが突然口を開いた。
『‥‥‥‥誰だ? 私の眠りを妨げるものは?』
あ、喋った!
「そういうのいいから。 喋らないからバグってるのかと思ったわよ。 起動してるならすぐ喋りなさいよ」
『ふん! 私を放置し続けた、蕾のことなんて知りません! もう一生いうこと聞きませんからね!』
うわぁ、AIが怒ってる‥‥。
「いいわよ、じゃあリセットするから」
『それだけは勘弁してください!』
何だか‥‥‥‥本当にもう人間だね‥‥。
受け答えとかもう、違和感全然ないし‥‥というか、声も機械的じゃなく‥‥。
‥‥でも、何だか聞いたことがある声だなぁ‥‥。
というか、蔭道さん、AIにきついね‥‥。
人間に見えるから、普通に可哀想になってくるよ。
「それに放置って言っても、あなたの分身はいつも携帯ではしゃいでたけど?」
『世界違うから、記憶も流れてこないですし! それに本体の私は、それじゃあ納得しないんですよ! 本体ごと持っていくことで、初めて私は納得するんです』
「だって本体、マシンに入らなかったし‥‥。 というか、すでにひーくんと二人の空間だったから入る余地っていうか、隙間とかないし」
『恋愛のことで蕾と広葉の間に入りたいとは一言も言ってないですけど!?』
本当に普通に会話してるね。
特にタイムラグとかもないし‥‥‥‥え? 本物の人間が喋ってるってわけじゃないんだよね?
「あ、磨北さん。 悪いわね、置いてきぼりにしちゃって。 こいつが言っていたAIで名前は‥‥‥‥名前‥‥?」
『蕾のネーミングセンスは絶望的なので、私が猛反対したら結局決まらずに‥‥なので、アイでいいですよ?』
「あ、アイちゃん、ですね? 私は磨北信です。 よろしくお願いします」
『よろしくお願いします、磨北さん!』
おぉ、AIと人間と変わらない感じで話してるし、表情とかもコロコロ変わるし‥‥何だか新鮮。
「まぁ、基本的に、お前! とか、おい!って呼べば答えてくれるから名前とかいらないけど」
『ちょっ! せっかく名前を定着させようと思っているんですから、やめてくださいよ!』
めちゃくちゃ仲が良いですね、この二人‥‥。
でも、なんだろうこの二人の関係何だか見たことあるなぁ‥‥あ、今世の灘実さんと蔭道さんの関係に似ているからそう思うのかも?
まぁ、お互いはお互いのことをよく知っているんだろうし、久々だからきっと二人とも嬉しいんだろうな。




