297 前世に降り立つ
引き続き、磨北信くん視点です。
出発してから、色々と話をして時間を潰していたが、正直いつ着くのかわからないので、少し私はその沈黙の空間に戸惑いつつ、到着するのを待っていた。
まぁ、ゆっくりの方を選んだのは私なので気長に待つしかないが‥‥。
でも、窓はもちろんのことないし、動いているような振動も感じないしね。
‥‥‥‥ちゃんと前世に行けるのかわからなくなるね。
「蔭道さん、あとどれくらいで着きますか?」
「もうそろそろ着くよ。 あ、大丈夫だとは思うけど、着いても、勝手に行動したりはしないでね。 そのせいで頭に激痛が走っても、私はどうすることも出来ないから」
「だ、大丈夫です‥‥」
そのあとすぐに、マシン内の、空間に着いた合図のような音が鳴り響いた。
それと同時に閉まっていた扉が、ゆっくりと開く。
「着いたわね。 あー、なにもしないでじっと座っているのも、退屈だったわね。 ‥‥‥‥帰りは速くしようかな‥‥」
気分が悪くなるんじゃなかったでしたっけ!?
「あはは‥‥。 それにしても出発する前と景色とか全然変わりませんね。 本当に前世なのかっていう‥‥」
「一緒の場所だしね。 まぁ、失敗していないってことなんだからいいじゃない。 ここは正真正銘の、以前の世界よ」
まぁ、森田さんもいないし、所々、こっちの場所の方が埃っぽいというか‥‥人が毎日使っているわけではないような感じになっているし、前世で間違いないんだろう‥‥。
「ここが‥‥‥‥。 そういえば、蔭道さん、AI取りに行くんですよね? 今から行きます?」
「えぇ、AIがあるのは昔、独り暮らしをしていた方に残してあるから、そっちにいかなくちゃならないけど‥‥」
「え!? 蔭道さんっていくつも家があるんですか?」
「物置みたいになっているけどね。 でも、AIのある場所は、研究、発明を主にやっていた場所だから、他のところと比べれば、ごちゃごちゃしてないと思うわ」
蔭道さんぐらいになると、いくつもの部屋を買えるんだね‥‥。
改めて、私とは住む世界が違うように感じる。
「凄いですね‥‥」
「そんなことないと思うけど‥‥そろそろ行きますか」
◇◆◇◆◇◆
「ほら、こっち」
私は蔭道さんに着いていき、タワーマンションの最上階まできた。
なんだか、凄いという言葉しかでてこないんだけれども‥‥。
そうして、厳重に閉まっている扉を開けると、そこには蔭道さんがいっていた通り、発明や研究をするであろうものがたくさんあり、言っていたように、ここが研究所なのだろう。
「この中にAIが‥‥」
「やっぱり、声だけじゃつまらないし、今、ホログラムをつけるから。 そしたら出てくると思うんだけど‥‥」
ホログラムかぁ。 何だかファンタジーによくあるようなものだね。
あのホログラムに姿を映し出して、会議とかしてるやつ‥‥。
そうして、蔭道さんが数秒もかからずに起動したホログラムに、一人の女の子の姿が映し出された。