295 世界から旅立つ
この話は磨北信くん視点です。
マシンの中に乗り込んで、私は二つあるうちの一つの座席に座る。
座ったら何かしないといけないことはないのかな?
‥‥あ、シートベルトらしきものもある。
「ん? シートベルトは別に着けなくてもいいわよ。 最近気づいたんだけど、ただ苦しいだけだなって」
苦しいだけって‥‥。
「じゃあ、なんで、あるんですか?」
「取り外すのが面倒だからよ、ほらじっとして。 そんなに広くないんだから」
「は、はい! すみません」
私はこれ以上、迷惑をかけるわけにはいかないのでじっとすることにした。
「前世に戻るって設定は‥‥あ、ここか。 よし、大丈夫。 すぐ行ける。 ‥‥磨北さんは気分が悪くなるのと、時間を待たされるの、どっちがいい?」
「え? え? えっと‥‥待たされる方ですかね?」
「わかった。 じゃあ低速にしてっと」
「ど、どういうことでしょうか?」
話が見えてこないんですが‥‥。
「ん? あぁ、初めて過去に飛んだときに、すぐ過去には着いたんだけど、それがあまりにも気持ち悪くて、それを軽減できないかと模索したんだけど、結局時間をゆっくりにするしか方法が見つからなかったという‥‥敗北を味わったわ!」
べ、別にそれは敗北じゃないんじゃ‥‥。
まぁ、確かに思い通りにはいかなかったのだろうけど。
「そ、そういうことですか。 じゃあ、今回は前世に着くのは少し時間がかかるってことですね」
「そうそう。 という訳で出発! ‥‥‥‥と言いたいところだけど、一つ渡しておきたいものがあるの」
そう言われ、なんだか時計に見えるようなものを渡される。
あ、蔭道さんも同じものを着けている‥‥。
「なんですか、これ?」
「この乗り物に乗って、前世に行くから問題ないとは思うけど、精神を守る装置、その名も‥‥ココロマモル君よ!」
「えっと‥‥はい?」
そういえば、灘実さんが前、蕾ちゃんのネームセンスの無さはすごい、ってきさねぇに話していたような気がする‥‥。
あちらはそうなのだが、こちらの蔭道さんもか!
や、やっぱり同じ人なんだな‥‥。
「万が一にも、こちらの方法でも精神に異常を来してる可能性がある場合を考えて、少し前から作ってたのよ。 本当はひーくんの分なんだけど、貸しておくわ」
「あ、ありがとうございます」
名前はあれだが、機能としては凄い‥‥。
腕に着けるだけで、それが出来るって、どういう仕組みなんだろう‥‥いや、たぶん聞いてもわからないからいいや‥‥。
「他にもいろんな機能がついてるから、行っている間は外さないように」
「はい。 わかりました」
「じゃあ、改めて、出発するわ」
「お願いします」
蔭道さんが何かを操作すると共に、私達は今世から旅立った。
『───警告し‥す。 未来‥の‥‥は‥‥‥‥であり、原則として、‥‥され‥います。 以後‥‥対‥者‥外‥‥‥なら、体に制‥‥‥‥‥‥が、課‥‥ます。 警告しま‥‥。 警‥‥します‥‥』




