289 浮気?
この話は広葉視点です。
磨北の言葉に俺は否定する理由が見つからなかった。
というより、たぶん陸と付き合うと言ったのが俺にとっては嬉しかったのかもしれない。
俺自身は磨北が前世に行くことに反対はしないとその目を見て、思った。
だが、問題は蕾だ。
俺がお願いすれば、やってくれるだろうが、蕾が自主的にやるかそうでないかで、安全面が大幅に変わってくる。
それだけ、世界を越えるというのは危険なことなのだ。
あいつ、話聞いてくれるのか?
そもそも今日は忙しそうにしてたんじゃなかったか‥‥?
‥‥‥‥う~ん、無理かもなぁ‥‥。
「磨北、前世に行くには蕾を説得しないといけない。 俺も一緒には行くが、お前自身が説明しないと意味がないからな。 出来るか?」
「蔭道さんですか? 前世に行くにはやっぱり蔭道さんが‥‥。 ‥‥あ、はい、こちらの世界の蔭道さんとは話したりしてるので、大丈夫だとは思いますけど‥‥」
あ、こいつ、こっちの蕾に会ったことなかったんじゃなかったか?
「一つだけ言っておくが、お前の今、同級生の蕾とここにいる蕾は相当違うぞ?」
「え、そうなんですか?」
「扱いやすさでいうなら、チビの蕾の方が何倍も扱いやすいだろうな。 何せ、奈留という優しさの塊が現在進行形で近くにいるんだからな。 人との接し方が大分違う」
陸と出会う前の蕾は、まぁかなりこっちの蕾と近かったが‥‥。
まぁ、同一人物だから似ているところはまだ沢山あるがな。
「そ、そうなんですね。 なんだか、緊張してきました‥‥。 でも、ここにいる蔭道さんをそんな悪く言っちゃっていいんですか?」
あー‥‥確かに扱いにくいって言っているようなものだもんな‥‥。
自分としては、そんな悪く言ったつもりはないが、確かに蕾に聞かれたら怒られるかもしれん。
「扱いやすさと一緒にいたいかはまた違う。 そんなこと気にする前に、自分のことを気にしろよ‥‥。 ほら行くぞ」
「あ、はいっ!」
◇◆◇◆◇◆
「ひーくん、ごめんなさい! 今、手が離せな‥‥‥‥誰、その男? 浮気?」
「その人を殺せるんじゃないかというくらいの目はやめろ。 俺も男だぞ。 それと、お前ともまだ付き合ってないから浮気じゃない」
お前その、疑いから入るところはどうにかならないのか‥‥?
磨北も大分驚いて、固まってるぞ。
「今、ひーくん、まだって‥‥‥‥いや、そんな誘惑に流されませんからね!」
「いや、流してるつもりはねーよ!」
なんで、さっきので照れられるんだよ!
あー、もう、本当にめんどくさい!
「そもそも、今のひーくんは先生の体で、女の人なんですから、体の性別に引っ張られるってこともあるかもなんですからね!」
「別に引っ張られてないけどな」
「万が一です! まぁ、そんなことになったらどんなことがあっても、戻す手段を作りますけどね」
蕾がいるから別に心配もしてないが、まぁ、その時がもし起きたらそうしてもらおう‥‥。
「その時はな。 ‥‥‥‥それで、そろそろこいつのこと話していいか?」
「そうでした。 浮気相手じゃないなら、この人は誰ですか?」
ふぅ、ようやく話が出来るようになった。
このまま何事もなく、全てが終わってほしい‥‥。
「あ、初めまして。 磨北信です」
先程から固まっているから、心配になったが一応普通に話せてるな。
別に印象としても悪くないし、これなら大丈夫だな‥‥。
「ご丁寧にどうも。 私は蕾。 ふーん、磨北ね‥‥‥‥磨北!?」
「ど、どうかしました?」
「磨北信って、元女の人って言ってたよね!? やっぱりひーくんの浮気相手!」
「もう、本当にめんどくさいわ!」
そういえば、磨北のことも蕾に話していたような気がする‥‥。
また、はじめから説明しないといけないのか!




