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287 行き違い

「前世の話ってどういうこと!?」


「え? 何言ってんだ? さっきからその話しかしてないだろ」


 いやいやいや、さっきからそんな話はしてないよ!

 しんくんがもしかしたら、いなくなっちゃったかもしれなくて、それで‥‥。


しんくんがこの世からいなくなったって‥‥話をしてたんでしょ?」


 はっきり言うべきなのだろうが、どうしても、亡くなったっていう直接的な言葉は使いたくなかった。


「なんだ、わかってるじゃん。 そうそう、いなくなったって話」


 私は先程とは違ってなんだか、緊張感が緩んだような話し方をする広葉こうように対して困惑した。

 なんで、そんな軽く言えちゃえるの?


「なんで‥‥なんで広葉こうようはそんなに軽く話せるの? そんな平然と言えるなんて、おかしいよ!!」


 私は初めて、広葉こうように本気の怒りを覚えた。

 そもそも、この感情になるのはあの時以来かもしれない。


 いや、あの時ほどではない。

 相手は広葉こうようなのだ、感謝している相手に怒っていいわけがない。

 私は自分の気持ちを静めようと深呼吸をする。


「あ、すまん‥‥」


「ううん、私もごめん‥‥」


 熱くなりすぎたことを反省した。


「悪かった。 俺にとってはただ、磨北まきたが前世に行ったってだけだが、お前にとってはそれだけじゃないんだろうな‥‥」


 そう、それだけじゃ‥‥‥‥え?


広葉こうよう‥‥今、なんて?」


「いや、だからお前にとってはそれだけじゃないんだろうなって‥‥」


「そうじゃなくて、その前!」


「ん? あぁ、磨北まきたが、前世に行ったって方?」


「どういうこと!?」


「‥‥‥‥は? だからさっきからそのことしか話してないんだか?」


「聞いてないよ!」


 何処からそんな話になってるの!?




 ◇◆◇◆◇◆




「えっと‥‥つまり、初めに言った、この世にいないっていうのは、今世から前世に行ったってことか‥‥‥‥分かりづらいよ!」


「いやいや、普通にわかるだろ、そうじゃなかったら俺が磨北まきたことを知ってるわけないだろ」


 いや、先生だから聞いていたんじゃないかなぁって思ってたんだけど‥‥。


「えー‥‥‥‥あ、じゃあ、連絡をするべきだったっていうのは?」


「いや、好きなやつと何も知らずに離れたら可哀想だなぁっと思って、連絡した方がいいか、でも言っても一緒に行けるわけじゃないし‥‥と、迷ってたってことだが?」


「じゃあ、後を追いそうっていうのは‥‥」


しんくんも行くなら、私も前世に行く! とか言うかもと思ってな」


 えー‥‥勘違いだったってこと‥‥?

 もう、そんな言い方だったら勘違いしちゃうよ!

 でも、私のミスから始まったことだし‥‥。


「‥‥ごめん、広葉こうよう。 色々と勘違いしてたみたい‥‥。 でもでも広葉こうようも、もう少しはっきり言ってくれたらよかったのに!」


「あ~、そこは俺の言い方が酷かった、すまんな。 最近は極秘の話が多くて、遠回りで曖昧に喋るのに慣れちまった部分があってな‥‥俺も、もう少し分かりやすく言えばよかったよ。 本当にごめんな」


 広葉こうようが頭を下げていることに途端に申し訳なくなってくる。

 こう話を聞いてみると、広葉こうようは普通に喋ってたみたいだし‥‥。


「え、あ、ううん大丈夫。 私の方こそ怒っちゃってごめんね?」


「あれで怒ってたのか。 あれくらいどうってことないぞ」


 広葉こうようは特に気にしてはいないのか笑っていた。

 本当にこの親友は、優しすぎるよ。



 しかしなんだろう、しんくんが亡くなったわけじゃないってわかって、ほっとしたからか、体が急な脱力感に襲われる。


 でも、うん‥‥‥‥本当によかった‥‥。


 私は今度こそ、我慢していた涙が頬を伝っていった。

 先程とは全く違う感情の‥‥‥‥嬉しい涙を。

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