284 あ‥‥言ってない!
「じゃあ、また明後日、学校で‥‥」
「うん。 奈留さん、またね」
花火が終わってしまい、屋台なども閉めていっていて、祭りが終わりを迎えたのを実感する。
本当はもう少し信くんといたかったが、お祭りも終わったので、理由もなく引き止める度胸が私にはない。
それにもう暗いし、祈実さんと一緒に帰るようだ。
確かに暗いところ、祈実さん一人で帰らせるわけにはいかないもん。
ここは私が我が儘を言うべきではない。
信くんとは、学校で会えるのだから、今は我慢するべきだ。
祈実さんと帰る、信くんの後ろ姿を見送る私に由南ちゃんが喋りかけてきた。
「本当は一緒に帰りたかったんじゃないの?」
「な、何故それを!?」
「そんな顔してた。 というか、別に顔見なくてもわかってたけど」
「そんなにわかりやすいですか、私って!?」
由南ちゃんに気付かれるのはいいが、信くんにバレるようになっては恥ずかしいので、それくらい酷くないことを祈るばかりだ‥‥。
「まぁ、というか、さっきまでの二人の会話聞いちゃったのよね」
「さっきって‥‥‥‥え!? さっきのこと?」
「えぇ、あの告白ね」
なんだか、改めて言われると‥‥‥‥恥ずかしいね。
でも、由南ちゃんには話そうと思っていたし、話す手間が省けたと思えば、まだ心が和らぐ。
「あ! 由南ちゃん、私にはあれだけ言うなって言っておいて、自分だけ酷いっす!」
「酷くないわよ、磨北くんの近くにいるところで言おうとするから、言っただけよ。 蕾が色々と壊しそうだったから」
「壊すって何っすか! 壊さないっすよ!」
あ、蕾ちゃんが口止めされていたのはそのことだったのか。
まぁ、確かに信くんと一緒にいるときに言われたら、羞恥心で死んじゃってただろうけど。
でも、二人とも知ってるんだったら、今後相談しやすいし、ありがたいです‥‥。
◇◆◇◆◇◆
「いや~でも、まさか奈留ちゃんが、信くんと付き合うことになるなんて‥‥」
その言葉に私はビクッとする!
蕾ちゃんが言ったことには大きな間違いがひとつある。
「‥‥あー、そのことで、聞きたいんだけど、付き合うってどうしたら付き合うのかな?」
「え? それはまぁ、付き合ってくださいとかじゃないっすか?」
「‥‥‥‥私そんな言葉一言も言ってない」
好きって言ったのは覚えてる。
問題はそのあとの付き合ってくださいだ‥‥‥‥言ってない!
「じゃあ、まだ付き合ってないんじゃない?」
「あ、由南ちゃんもそう思う?」
「あれ? でも好きってお互い言ってたじゃないっすか? その時の流れでもしかしたら言っていたんじゃ‥‥」
「たぶん、それに満足しちゃって、付き合ってって言ってないと思う‥‥」
あーどうしよう‥‥。 もう、絶対に好きって言っただけだよ!
まさか思いがけないミスをすることになるとは‥‥あ、明後日! 明後日にちゃんと言おう!