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278 あなたの好きな人

 しんくんに好きな人‥‥いや、当然いるとは思っていたが、本人の口から聞くと、なんだか少しだけ心が痛いような‥‥少し暗い気持ちになりそうだった。


 そ、そういえば、前一緒に料理を作ったときに花嫁修行っていっていたような気がする‥‥。



 はぁ‥‥そりゃ、前世も友達が多かったし、美人で優しかったし、告白とかもされていただろう。

 きっと、仲の良い、男の子だっていたかもだし。


 その中で、私と言えば、図書室での出来事がほとんどでその他では全然、しんくん‥‥祈実きさねさんと関わってはいなかった。

 祈実きさねさんにとっては、私は友達とは思われていても、それ以上には思われていなかっただろう‥‥。


 ただ、本のことが話せる友達。

 いや、友達と思われていたのかも、その時の私にはわからなかったし。

 私もそれ以上の関係になろうという努力はなにもしなかったしね。


 だから私にそんなこと思う権利はないかもだけど、やっぱり好きな人だから、つらい‥‥。



 ‥‥いや、ちょっと待って‥‥! 今、しんくんの初恋の相手とかの情報を聞いて、私がその初恋の人に近づけるように努力するっていうのはどうだろうか!

 つらいっていうのはそうだが、ずっと引きずって良いことなんてないし、それなら今、そういう情報を聞いて今後に活かした方が、ずっと良いんじゃないか?


 なんだか、今日の私、転んでもただでは起きない精神だね!

 折角、二人でいるんだもん、こんなチャンスを私自身で潰したくない。


「その好きな人って、どんな人だったの?」


「‥‥え!? えっと‥‥」


 ど、どうしたのだろうか?

 しんくんがめちゃくちゃ動揺しているんだけど‥‥。


 やっぱり、そんな恋愛話なんて私には話せないよね‥‥異性に自分の好きな人のことを話すって勇気のいることだし。

 はぁ、失敗しちゃった‥‥。


「ごめんね! 変なこと聞いちゃったね‥‥」


「いや、ちょっと驚いただけだよ。 別に話しても大丈夫だとは‥‥思う」


 一瞬言葉をつまらせたが、しんくんは少し照れながら、その人のことを話始めた。

 折角、しんくんが無理をして話してくれるんだから、出来るだけその人に近づけるようにしなければ‥‥!


「前世のことなんだけど、その好きな人っていうのはね、初めて出会ったとき‥‥知り合い‥‥‥‥いや、弟に似ていたんだ。 一目惚れって訳じゃなかったけど、雰囲気が似ていたからか気になる人ではあったんだよね」


 そうか‥‥弟、つまりは前世の磨北まきたしんくんのことだね。

 へぇ、そんな似てるような人がいたのか‥‥でも、私は前世の磨北まきたしんくんを知らないから、私が頑張って似せるっていうのは出来そうにないな‥‥。


「でも、その気になる人と中々話せなくて、でも、その人が一人でいるところを偶然見かけて、僕‥‥私は声をかけたんだ」


 祈実きさねさんに声をかけてもらえるなんて、その人凄くいい思いしてるなぁ。


「初めて話したときから、この数日後も、その人とは色んな話をするようになって‥‥なんだろうな。 何ヵ月か経つと、少しは距離が近づいたのか、いつもはクールな感じなのに、たまに見える笑顔とか、本当は穏やかな性格なんだなっていうのが、見えてくるようになり‥‥。 私はもっとその笑顔がみたいと思うようになって‥‥」


 そんな、ギャップがある人だったんだね‥‥。

 やっぱり、私の知らない誰かだけど、少し羨ましい。 祈実きさねさんにこんなに思ってもらえるのは。


「私はいつの間にか好きになってた‥‥。 好きな人は言うならば‥‥危うさと優しさを混ぜ合わせたような人だったんだ‥‥」


 一通り話終わったのか、しんくんは何か物思いに更けながら、沈黙していた。


 私は私で、そこまで、好きな人に私がなることができるのか、不安になり、何か言葉を発することはしなかった。


 先に声を出したのは先程まで沈黙していたしんくんだった。

 そのしんくんの顔は何処か先程までの表情とは違うような気がした。



「だからね、奈留なるさん。 僕は‥‥‥‥私は前世の時、そんな‥‥夕闇ゆうやみくんのことが好きだった」



 ‥‥‥‥え?


 私は突然のことで、その言葉をきちんと理解しているのかわからず、どんどん時間が過ぎて行く‥‥。


 その時になって、ようやく、ひとつめの花火が、真っ暗な夜空に大きな音を立てて、光輝いた。

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