表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
274/780

269 掴まれた手は‥‥

「口がヒリヒリするっす‥‥」


 ロシアンたこ焼きを一人で完食したつぼみちゃんは買った時とは比べ物にならないほど、テンションが下がっていた。


「大丈夫? かき氷食べる?」


「今、食べ物は‥‥‥‥かき氷!? いるっす!」


 そう言って、つぼみちゃんは私が持っていたかき氷を受けとると、すぐ食べ始めた。

 ちなみに、かき氷はつぼみちゃんが、たこ焼きを食べるのを頑張っている間に買いにいきました。

 やっぱり、お祭りでかき氷は鉄板だからね。


「それにしても、さっきより人が多くなって来たわね」


「そろそろ、本格的に暗くなってくる頃だからね」


 夜には花火もあるので、それに合わせて来る人も多い。

 屋台に挟まれた中央の道は、今の時間でも、一歩入ると中々抜け出せなそうだ。


「じゃあ、これ以上多くなる前にもう少し回っていた方がいいわね。 でも、もう結構多いから、はぐれないで‥‥ね!」


「その、ね! のところで私を見るんっすか! 問題ないっすよ」


 つぼみちゃんはそう言っているけど、由南ゆなちゃん全然信用していなさそうだな‥‥。


「じゃあ、お姉さんと手を繋いでおけば大丈夫だね♪」


 そういって、祈実きさねさんはつぼみちゃんの手を繋ぐ。

 なんか、姉妹みたいでいいな、それ。 ちょっと羨ましい。


祈実きさねさん、よろしくお願いします」


「くっ、子供扱いが過ぎると思うっすよ‥‥」


 つぼみちゃんは凄く不満そうだけど、祈実きさねさんはなんだか嬉しそう。


「じゃあ、いきましょうか」


「行こー♪」


 そう言って、人混みの中に行ったのだが、やはり進むのが遅いし、人との間隔も狭く、中々苦しいな‥‥。

 数分間、人混みの中を歩いていると由南ゆなちゃんがこの人混みが我慢できなかったのか、ふらふらになりながら、言った。


「ちょっと飲み物買うわ。 このままじゃ、きつい‥‥」


 由南ゆなちゃんは、近くにあった、飲み物の缶を氷水に入れて売っている屋台のところで人の流れから出た。


「じゃあ、僕も」


「あ、私も買うっす~」


つぼみちゃんも行くの? じゃあお姉さんも行こうかな~」


 そういって三人も人の流れから出ていく。


 じゃあ、私も‥‥‥‥って、凄い、人に押されて、流されてるー!


「ちょ! 皆───!」


 完全に人混みからでるタイミングを失ってしまった。

 どんどん、離れていく飲み物の屋台。

 このままじゃ、はぐれちゃう!


 この人混みだし、一度はぐれたら、合流するのが大変なのは目に見えている。

 戻らなきゃという、意思に反して遠ざかっていく‥‥。

 そして、ついに皆の姿が見えなくなってしまった。


 あ、もう戻れない。


 そう思った時、誰かが私の手を掴んだ。


 掴んだ人を見ると、そこにいたのはしんくんだった。


「やっと追い付いたよ。 奈留なるさん一人で凄く流されていくから‥‥奈留なるさん? 大丈夫?」


「‥‥‥‥あ、うん。 大丈夫‥‥!」


 まさか、来てくれるとは思っていなかったし、しかも手を握られているということで、私は我を忘れそうになるほど、心が高鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ