262 浴衣を着ます!
蕾ちゃんも、浴衣を選び終わり、その後は五人全員で、少しゲームなんかをして遊んだ。
そのせいか、お祭りの時間の一時間前になろうとしていた。
本当に、楽しいことってあっという間に過ぎて行くね‥‥。
しかし、これからの時間も楽しいはずなので、自然と寂しい気持ちにはならなかった。
信くんはまだ、家にいるだろうか。
もし、早めに行っているなら、待たせるのも申し訳ないので、早く行った方がいいんじゃないのかとか、色んな想定を考えてしまう。
「奈留~! そろそろ着た方がいいんじゃない?」
「あ、ごめん、由南ちゃん! 今いくー!」
私は正直、着物や浴衣の着方なんてわからないので、由南ちゃんにお願いするしかないわけだが、その由南ちゃんを待たせるわけにはいかない!
「由南ちゃん、これどうすればいいっすか? ‥‥あれ、凄く絡まってきたっす!」
「ちょ、もう私がやるから大人しくしてなさい!」
自分でやろうとしていた蕾ちゃんは何故か色々とおかしな着方になっていた。
うん、例えるなら、布団を紐で巻き付けたみたい。
「さすがにそうはならないよ、蕾ちゃん‥‥。 あれ? 由南ちゃん、浴衣の衿ってどっちが上だったっけ?」
「左側が上よ」
「それって、女性だからだっけ?」
「いえ、浴衣は男女変わらなかったはずよ。 違うのは洋服の方ね」
あ、そうなんだね。
洋服は何だか男だったときの記憶と今の記憶で、ごちゃごちゃしているから、浴衣は覚えやすいな。
どちらが男性でどちら女性かではなく、自分はこっち、っていう感じで、覚えていたから体が勝手に動いちゃいそうになるんだよね。
「へ、へぇ‥‥左が上っすね‥‥‥‥由南ちゃん、ちょっとほどいてもらってもいいっすか?」
「はぁ、もうそれ以前の問題なんだから‥‥ちょっと待って。 どうやったらこんなに帯が絡まるのよ‥‥」
「楽しくなっちゃって」
楽しくなると絡まる帯って、めちゃくちゃ怖くないですか‥‥。
いや、冗談はさておいて、普通はあり得ないよね。
「あ、由南ちゃん、私着れたよ~」
「よし、バッチリね。 お兄さんに見せてきたら?」
「あ~、そうだね。 そうする」
由南ちゃんにオッケーをもらったので、私はリビングへ向かった。
◇◆◇◆◇◆
「奈留、もう私服は浴衣にしよう」
「何それ!? えっと、褒め言葉なのかな?」
日頃から着てても、良いくらい似合ってるってことでいいのかな?
兄さんの感想はわかりづらいよ!
「おう、凄く似合ってるぞ。 さすがは奈留だ」
「そ、そうかな? えへへ‥‥♪」
兄さんのお墨付きも貰えたし、これでお祭りに行く準備は、ばっちりだね!