249 行きませんか?
「じゃ、私こっちだから」
私と由南ちゃんと信くんの三人で帰っているのだが、急に由南ちゃんが右の道を指差す。
「‥‥え、由南ちゃん?」
確かに右の道へ行けば、由南ちゃんの家へは少し近くなるが、本当に少しなので、何時ももう少し先でお別れするのに‥‥。
「灘実さん、そっちの道なんだ?」
「そうなのよ。 こっちからでしか帰れないのよ」
「いや、由南ちゃん、嘘ついて「奈留?」‥‥いえ、何でもないです」
なんでそんな怖い顔するのさ!
だって、どこからでも帰れるじゃん!
いつもだったら、特に何も言わなくても、一緒に帰ってくれるのに‥‥しかも今日は信くんがいて緊張するからできれば一緒にいてほしいのですが!
絶対に意図してやってるのはわかってるんだけど、私の身が持たない。
ここは頑として、引き留めなければ!
「由南ちゃん! ‥‥‥‥あれ、由南ちゃんは?」
「もう、帰っていったけど‥‥というか全力で走って行ったけど‥‥何か予定でもあったのかな?」
逃げられた!
くっ、信くんに声をかけたのもこれが狙いか‥‥!
悔しいが、由南ちゃんは私のことが色々とわかっていらっしゃるので、こうしないと二人にならないということをわかっているのだ。
しかも、家はまだ先なので、信くんと結構な時間一緒に帰ることができる。
‥‥何だろう、私、今嬉しいと思ってる。
「じ、じゃあ、二人で帰ろっか」
「そうだね。 あ、奈留さんと前世では一緒に帰ったことはなかったから今、何だか嬉しいな」
「嬉しいなんて、恐縮です‥‥」
あんなに放課後一緒にいたのに、帰るのは別々だったからね。
でも、そうすると、気付いてから初めての二人での下校ということになるのか‥‥。
‥‥意識すると喋れないほど緊張するので、もう気にしないようにしよう。
「あ、そうだ。 奈留さん、少し僕の家に寄っていかない?」
「えぇ!? 信くんの家に?」
「うん、時間があればだけど‥‥」
こ、これはどうしようか。
信くんの家には行ったことはあるが、あのときと今とでは色々と変わっているし!
というか、信くんは、なんで家に誘ってくれているのだ?
いや、話をしたいだけなのかもしれないが、それなら違うところでも出来る。
‥‥でもまぁ、信くんだから安心できるしね。
「うん、時間は大丈夫だから、ちょっと寄らせてもらおうかな?」
‥‥あ、でも今思ったら、信くんの家には祈実さんがいるよね?
言ってしまえば、二人の祈実さんがいるのと変わらないということだ。
私、色々と大丈夫なのかな‥‥。
一瞬で不安になり、少し了承したのを後悔した。