248 途中からは大変
「磨北くん。 一緒に帰りましょう」
結局引っ張られ、私と由南ちゃんは信くんの目の前まで行った。
それにしても、由南ちゃんは特に誰かに話しかけるのに緊張のようなものがなくていいね。
私は声をかけるのが、凄く緊張するのに‥‥。
「え? ‥‥灘実さんと‥‥奈留さん? うん、大丈夫だけど」
「そう、よかったわ」
あー、帰ることが決定しちゃった‥‥嬉しいけどね!
私一人だったら絶対無理だし、由南ちゃんに感謝だね。
「あれ? 二人は今日は部活はいいの?」
「えぇ、今日は初日ということで、休みなのよ。 ね、奈留?」
「え! あ、うん。 そうなんだっ!」
急にだったこともあり、声が上擦ってしまった。
でも、由南ちゃんのお陰で、話に入ることができてよかったというのもあるが‥‥。
「ソフトテニス部だったよね。 楽しそうだなぁ」
「そういえば、信くんは部活はやってなかったんだったっけ?」
たまに忘れそうになるが、信くんは転校生だしね。 それに特に先生からの強制もなかったみたいだし、入っていないようだ。
「うん、でも体を動かすのは好きだから、やってみたいんだけどね」
「今からでも遅くはないんじゃないかしら?」
「うんうん、そうだよ!」
部活をしている、信くんが見てみたいという欲が凄い出ている気がするが、そんなことは気にしない!
「途中から入って、輪を乱したりとかしたくないんだよね。 それに一年生の時は素振りとか、大変な練習をしてきているんだろうから、一年の練習に入っても、二年の練習に入っても、みんな良い思いはしないと思うんだ」
一年生の練習に入ると、年上なので、一応先輩として気を使うし、二年の練習に入ると、何も苦労をしていないのにって一部の人には思われそうだね。
でも、信くんならやれるんじゃないかなと私は思うんだけどね。
「まぁ、蕾だって部活入ってないし、強制っていうわけでもないから、無理して入る必要はないわよね」
「あ、蔭道さんも部活入っていないんだね」
「そうなんだ~。 知らなかった」
私も初耳である。
「磨北くんはわかるけど、何で奈留が知らないのよ」
確かに運動系の部活に入っていないことはなんとなくわかる。
というか、蕾ちゃんが運動している姿が全然思い浮かばない。
だけど、もしかしたら文化系の部活に入っているのかと思ったのだ。
「いや、もしかしたら開発ラボ的な部活があるのかと思って‥‥」
「工業高校じゃないんだから、あるわけないでしょ? あったとしても蕾しか入らないし、顧問の先生もいないんだから部として成立しないし」
「まぁ、部活の域越えてるもんね‥‥」
今だって、家で機械の改良してるしね。
明日絶対、詩唖先生に怒られるだろうなぁ‥‥。