238 同じだが違う二人
この話は前世の森田広葉視点です。
先生としての仕事が終わり、俺は何時ものように特に何も考えず、蕾や、先生が待つ、家に帰ろうとしていた。
先生の事情もあったが、半分は自分の我が儘で先生と体を変わってもらったからには、先生の仕事もきちんとしなければとは思うが‥‥やはり疲れる。
長期休みに休めないというのは、元々学生だった自分からしたら悲しいものがあるし、色々とやることが多くて大変だ。
「あんなに明るい詩唖先生が、暗い気持ちになるのも仕方がないような気がするな」
人間関係のことは変えることが出来ても、仕事に関しては特に変わらないからな、変わったあとが心配になる。
「そういう仕事の方も戻る頃には少しは改善できるようにしないとな‥‥‥‥っと、あいつは‥‥」
「あ、先生ー!」
考え事をしていたので、近くに来るまで気がつかなかったが、そこにいたのは森田広葉、つまりはこの世界の俺だ。
まぁ、俺とはありとあらゆるものが違うので、正直もう別の人間と言ってもいいかもしれない。
「久しいな、森田」
「ご無沙汰してます、先生。 ‥‥‥‥出会った時、毎回思うんですが、同じ森田広葉なのにやっぱり色々と違いますね。 なんかこう、オーラみたいなものが‥‥」
「何言ってんだお前。 まぁ、前にも説明したが、生き方が変わっているからな。 全く同じ人間というわけではない」
こいつには必要以上に色々と喋りすぎてしまったからな。
どうしても、別の人間と割りきれない部分があって、色々とひいきした部分がある。
まぁ、良いやつでバカなのが幸いしてか、特に問題という問題は起きていないが‥‥。
「俺も先生みたいになりたいですよ! あ、ここは先生じゃなくて師匠と呼べば‥‥!」
「俺になっても良いことなんてねーよ。 お前はそのままのお前の方がいい。 そう、バカでいい」
「いや、なんだか嫌ですそれ!」
俺が頑張ったのは陸のためだが、その道のりは辛いことばかりだった。
出来ればこいつには何事もなく、人生を過ごしてほしいものだ。
「あ、そういえば、前にも謝りましたけど、先生から言われたこと守れなくてすみませんでした」
「蕾のことか? いや、前にも言ったが、別に大丈夫だ。 初めは関わるなとはいったが、今のお前なら問題ない」
正直、言う必要はなかったと、今になって思うが、もしもがあるからな。
「そういえば、なんで、関わるなって言ったんですか?」
蕾は心から信用した人の言うことをなんでも聞いて、実現させようとする。
扱いを間違えると大変なことになるので、色々と把握するまでは関わらせたくなかったというのが、大きい。
まぁ、こんなことまで事細かく話す必要はないな。
「お前が蕾に無茶なお願いをしないように、だな」
「う~ん、よくわからないですけど、しないですよ?」
「あぁ、わかってる」
それに、この世界の蕾も最近では陸のお陰て変わったところが多いしな。
本当に、凄いやつだよな‥‥。




