232 久しぶり!
信くんと二人きりでのカフェ‥‥‥‥心臓が飛び出しそうなほど緊張して、今は何もできる気がしない‥‥。
目を合わせられたのも信くんがカフェに入ってきた時だけで、今は恥ずかしくて、ずっと下を向いています。
「水族館以来だけど‥‥なんだか雰囲気が変わったね」
は、話しかけられた! ‥‥いや、話すために一緒にいるんだからお話ししないとおかしいよね、何言ってるんだ私は。
「そ、そうかな‥‥?」
変ってこと!? 服のことだよね? 元男だったのにこの格好はやっぱり変だって思われたのかな‥‥。
「何だろう‥‥凄く綺麗」
え、綺麗? こ、これは褒め言葉として受け取っていいのだろうか?
‥‥皮肉って線もあるかもしれないし。
いや、由南ちゃんが選んだんだから間違いはないはずだし、信くんはそんな人じゃないだろう!
「服、由南ちゃんに選んでもらったのを着てるんだよ。 私だとこういう格好はあまりしないから‥‥」
「凄く似合ってると思うよ。 ‥‥うん、何か自信を無くすくらいに‥‥」
似合ってるって言ってくれた♪
あぁ。喜びすぎて、後半聞こえなかったけど、何言ったんだろう‥‥。
「似合ってるなら、良かったの‥‥かな? ちゃんと由南ちゃんにはお礼しないと」
恥ずかしいからって、わがままを言って、ごめんね由南ちゃん!
今、由南ちゃんのお陰で凄く嬉しい思いをしてます!
◇◆◇◆◇◆
その後、私達はいよいよ前世の話に入った。
「ねぇ、奈留さん。 奈留さんは本当に夕闇くんなんだよね?」
「あ、あのときはちゃんと言わなかったもんね。 そうだよ。 夕闇陸です。 ごめんね磨北さん」
自分から聞いたのに、私の方は答えていないなんて、いけなかったな‥‥。
「ううん、大丈夫。 僕もあのときは驚いて話せる状態じゃなかったし。 少し時間があってからだったから色々と考えることが出来て良かったよ」
気を使ってくれているのかな?
‥‥本当に信くんは優しいなぁ。
「そう言ってもらえると、ありがたいかな‥‥」
「気にする必要はないからね。 あ、これだけは初めに言っておこうと思っていたんだけど、忘れてたよ。 改めまして‥‥お久しぶり、夕闇くん」
何だが信くんのその言葉は、私が今、懐かしい磨北祈実さんと話しているのだと、実感する言葉だった。
「うん、久しぶり、磨北さん!」
こんなことを言える日が来るとは、少し前までは想像できなかった。
転生して、本当に良かったと、そう思う。
「あはは、なんだか、今までもずっと会っていたから、変な感じ‥‥」
「そうだね、元から友達として一緒にいたのに変だね」
そう言ったことがおかしくなって、私達はお互いを見て、笑う。
初めの緊張は何だったのか。 今はもっともっと、信くんと話していたい。
私は今、心からそう思った。




