231 向かう先には
由南ちゃんの家で、ばっちり全身変えられた私は、生気を失いかけていた‥‥。
うん、何だろう‥‥なにもしていないはずなのに、凄く疲れていた。
由南ちゃんは嬉しそうだったけどね。
その後、何とか別の控え目な服をお願いします! と言いつつ、外に出ることを渋っていた私を見かねて、その服装のまま、由南ちゃんの家から追い出されてしまった‥‥‥‥ひどい。
そして現在、私は待ち合わせ場所である、カフェに向かっているのだが‥‥。
は、恥ずかしい!
何これ、信くんに会いに行くのも緊張してたけど、それプラス、服装の恥ずかしさも追加されたんですけど!?
それとも、おしゃれっていうものはこんなに恥ずかしがってするものなのか‥‥‥‥いや、違うな。
何かを得れば何かを失うとは言うけどさ‥‥いや、この服装が信くんに不評を買ったら、何もかも失うんですけど!
確かに由南ちゃんとか、蕾ちゃんとかが着たら可愛いんだろうけど、私だとこの服の魅力が半減するような気がする!
それと今、後悔しているのは服装のこともあるが、今通っているこの道!
カフェからほぼ直線で行けて近いので、通っているのだが、幅が広くて、尚且つ‥‥人通りが多い。
そう、人が多いのだ!
もうさっきから、すれ違う人、すれ違う人に見られたりして恥ずかしいし、たまに二度見してくる人いるし!
そんなに、この服装似合ってないのかな!?
それとも髪? ‥‥‥‥え、顔?
私の中身のことを知っている信くんはともかくとして、普通の人にも似合ってないと思われるのは何だが、由南ちゃんに申し訳ないから、出来れば勘違いだと思いたい。
由南ちゃんがやってくれたのだから間違いはないはず。
でも、似合ってるって思い込んでも恥ずかしいものは恥ずかしいからね。
もうちょっとカフェまで急ごう。
◇◆◇◆◇◆
急いで歩いたので、少し息が上かってしまったが、カフェについた。
そのカフェは、今ではすっかり癒しの場と、なりつつある、マスターと蓮佳さんのお店。
別の場所にしようかなと思ったのだが、慣れているところの方が落ち着いて信くんと話ができると思い、私がここを集合場所にした。
一応、マスターには今日のことを伝えてある。 しかし、今日は特に来ることを蓮佳さんの方には伝えていないので、奥から出てくることはなさそうだ。
しかも、今日はバイトの人までいるし話しづらいだろうしね。
‥‥まぁ、蓮佳さんとお話をできないのは残念だけど、またの機会だね。
今は信くんに集中だ!
「あ、奈留さん」
「し、信くん!」
カフェの入り口を見ると、そこには信くんの姿が。
も、もう来てたんだ!
一瞬、驚いていまったが、出来るだけ平常心を保ちつつ、私は信くんの顔を見る。
こうして今、私と信くんの、二人の時間が始まった。