227 驚いて、そして‥‥
この話は磨北信くん視点です。
僕、磨北信は今、外に買い物に出ていた。
二日前に、奈留さんのことを知ってから、私は様々なことが上の空になっていた。
それを見かねてかはわからないが、きさねぇからおつかいを頼まれてしまった。
気分転換に外に出ると、新鮮な気持ちになる‥‥‥‥いつもの外なんだけどね。
まだ気持ちがはっきりとしていない私には、中に籠っているよりいいかもしれない。
でも、好きな人がこの世界で楽しく生きていることで、こんなに気持ちが明るくなるとは思わなかった。
本のことを話したときも、読んだことがある本が妙に同じものもあるなと思っていたけど、夕闇くんも私が薦めた本を読んでくれていたんだ‥‥。
何だかそれが嬉しかった。
でも、私は今、悩んでいる。
本当に奈留さんに気持ちを伝えていいものなのかを。
迷惑になるんじゃないかと思わずにはいられない。
それならもう、なにも言わない方が‥‥。
はぁ、また暗い気持ちになってしまった。
もっと、楽しいことを考えないとね。
それよりも、早く買い物行かないと。
‥‥あれ? あそこにいるのって詩唖先生?
私の今のクラスの担任の先生で凄く変な人だけど、きっと心は優しいんだろうなぁと何となくでそう思っている。
「詩唖先生、こんにちは。 何されているんですか?」
「お、磨北か。 少し用事があってな。 それよりお前、何だか何時もよりテンション高いな」
「そ、そうですかね‥‥?」
夕闇くんのことを考えていたから、何時もよりは高いかもしれないけど、そんなの誤差だと思うけど‥‥。
やっぱりこの人、ちゃんと生徒のことも見てる人なんだなぁ。
「さては良いことがあったな。 良い出会いでもしたか?」
「‥‥え!? どうしてわかったんですか!」
私、何も言っていないのに‥‥こ、この人、エスパーかなにか!?
「まぁ、暇だし、少し何処かで話をするか」
◇◆◇◆◇◆
「えぇ!? 詩唖先生が森田さん!?」
「ちょ、ばっ! お前声でけぇよ!」
「あ、すみません‥‥‥‥。 で、でも行きなりそんなこと言われて、驚かない方が変ですよ!」
しかも、サラッと言ったし、この人!
軽く世間話でもするのかと思ったら、そんなことを話されるとは‥‥。
あ、でも今考えたら、少し前に奈留さんの友人もこの世界にいるっていってたもんね。
まさかそれが森田さんだったとは‥‥。
「まぁ、言わなくてもいいかとは思っていたんだが、お前には一応、恩があるからな。 秘密にしておくのも正直、仲間外れみたいだしな」
「仲間外れにされないのは嬉しいですけど‥‥‥‥ん? 恩ってなんですか?」
私が森田さんに会って、ちゃんとお話ししたのは、お墓の前での一度きりのはずだけど‥‥。




